悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

それでもやっぱりTVが好き!「リブート」

昨今の映画もテレビドラマも“リブート”作品が多い。
“リブート”というのは、過去にヒットした作品を新たな構成やキャストで作り直すことを指す。
リメイクとは何が違うの?と言うと、映画「ジェイ&サイレント・ボブ リブートを阻止せよ!」(Jay and Silent Bob Reboot)の中でこんなセリフがある。
リメイクもリブートもオリジナルのファンを冒瀆した金稼ぎ目的という意味では全く同じだ!

 

Hulu(日本ではディズニープラス)でスタートしたコメディドラマ「リブート」(Reboot)は、その名の通り往年の人気シットコムを“リブート”しようとする製作現場のてんやわんやが描かれる。

物語は、新進気鋭の女性脚本家ハンナがHuluに、10年以上も前に人気だったシットコムを現代風にアレンジしたリブート企画を持ち込むところから始まる。
晴れて企画は採用となったのも束の間、ドラマを新しく生まれ変わらせたいハンナと、昔のギャグを踏襲したいかつての脚本家ゴードンと衝突する。実はゴードンとハンナは不仲の親子関係でもあった。
さらに、再度結集した俳優陣も曲者揃いで、撮影がなかなか進行しないようすが毎話描かれていく。
このように製作現場の内幕モノとしては、コント番組の裏側のドタバタを描いた「30 ROCK」を思い浮かべるが、今作の「リブート」は“シットコム”の舞台裏というのが特徴だ。
 
今作の(劇中のではなく実際の)脚本を務めるスティーヴ・レヴィタンは、過去にいくつものシットコムを手がけた大ベテランである。特に「モダン・ファミリー」は10年以上続くヒット作となった。
そんな彼が今作を手がけているだけあり、シットコムのあるあるだったり、テレビドラマでよく見かける内容がメタ的に描かれていて、たとえば再結集した俳優陣がTVでは人気だったものの、終了後のキャリアが鳴かず飛ばずというには妙にリアルで笑ってしまう。
 
ほかにも、このドラマを配信するHuluが、そのままHuluとして劇中で登場し、職場の労働環境について親会社のディズニーからお達しが来たと愚痴をこぼす場面がある。
実際にHuluを所有する20世紀スタジオが、ディズニーに買収されて以降本当にあるんだろうなと思ってしまう。
 
また、演じる俳優陣もテレビドラマにゆかりのある面々で、「Key & Peele」のキーガン=マイケル・キー、「クレイジー・エックス・ガールフレンド」のレイチェル・ブルーム、「ジャッカス」のジョニー・ノックスヴィル(!)などTV好きなら一度は目にしたことがあろう豪華な顔ぶれ。
毎話のエピソードの名前も“Growing Pains”、“What We Do in the Shadows”など実際のTV番組の名前を用いている凝りようである。
 
ただ、純粋にコメディドラマとして見ると空回りしている印象も否めなく、その点が残念ではある。
その一方で、シットコムやテレビドラマ好きの人は魅力溢れる作品に違いない。
 
印象的な場面がある。
ストレスを抱えるHuluの役員の女性を励まそうと出演者がスタジオを連れ出し、最終的に彼女は元気を取り戻す。
その様子を見た彼は言う。
「ほらね、テレビはいつでもハッピーエンドなんだよ。」
やっぱりテレビドラマって良いよなぁ、としみじみ思ってしまった。

シングルマザーの奮闘に人生を見る「ベター・シングス」

年に何本もドラマを観ていると、その時は面白いなぁと思いながら、終わってしまえば記憶にあまり残らないような作品も多かったりする。
実際そういった即物的な楽しさこそTVドラマの良さでもあるから、一概にそれが良い悪いという訳ではないけれど、やっぱり心に残ることなく終わってしまうと少し寂しい気もする。
そんなドラマが多くある中で、「ベター・シングス」は観終えた後も、心に楔を打たれたような深い余韻を残すドラマシリーズだった。

「ベター・シングス」は、2016年にスタートしたアメリカのコメディドラマで、2022年にファイナルシーズンとなるシーズン5を以って終了した。日本では現在Disney+(ディズニープラス)で配信されている。
物語はサムというシングルマザーと反抗期の娘3人、そして向かいの家に住むお節介な母親との日常が描かれる。
この“日常”というのが、本当に些細な出来事ばかりで、別れた旦那がムカつく、だったり、娘の学校のママ友が嫌味な奴だった、とかで「一体次回は何が起きるんだ?」のようなTV的なクリフハンガーな出来事は一切起こらない。
じゃあこのドラマの何が面白いのかと言えば、そういった日常のイラッとすることやモヤモヤに対して、主人公のサムがガツンとぶつかりながら日々奮闘する生き様である。


生き様というと少し大袈裟かもしれない。でも、彼女は女優として働きながら、職場における“女性”の立場として苦労し、家に帰れば反抗期の娘たちに“母親”の立場として苦労し、同僚やママ友、娘たちと正面からぶつかっていく様はまさにカッコいい“女の生き様”なのだ。
その一方で、面白いことがあれば大声で笑う感情表現豊かなキャラクターでもある。このサムというキャラクターの魅力こそが、このドラマの大きな要素になっていて、日々をたくましく生きる彼女とその家族たちをケラケラと笑いながらも、いつしか観ている側も応援されているような気持ちに不思議となってくるのである。


このサムを演じるパメラ・アドロンは、このドラマの主演のみならず脚本、監督、プロデューサーをこなし、自ら働く女性、母親としての体験を作品に投影しているというから驚く。
そういったパーソナルな作品であるからこそ、娘たちに女性として生きる大変さ、同時にその素晴らしさを全身で説く姿に心が打たれるのも納得だなと思う。


ただ、今作を語る上で避けて通れない話題もある。アドロンと共同クリエイターだったルイス・C・Kがセクハラ被害を告発された事件ある。
事の詳細はここでは伏せるが、告発があったのは別の作品であったものの、ジェンダー差別や女性の社会進出を描いた今作に携わりながら、こういった性被害が起きてしまったことは本当にショックな出来事だと思う。


結果的に2017年にC・Kは作品から降板し、シーズン3以降はアドロンが1人でドラマを仕切ることになった。
正直に言えば、シーズン3以降からドラマの作風が変わってしまった印象は否めない。
ただ、シーズン2までが所謂“ファミリードラマ”であったのならば、それ以降の作品はよりリアルな日常の描写、例えるなら上質なエッセイのような、取り留めがないけども大切な日々の生活が丁寧に描かれる割合が増えたように思う。


ドラマは後半になるにつれ、幼かった娘たちも成長し、次第に親元から離れていく。そんな中でサムがひとりになり、家族に思いを巡らせるという場面がある。
そこに流れるのは、かの有名なモンティ・パイソンの「Always Look on the Bright Side of Life」である。「ライフ・オブ・ブライアン」のエンディング曲として知られている曲だが、その歌詞はこうである。

Some things in life are bad
They can really make you mad
Other things just make you swear and curse
人生は悪い時もある
めちゃくちゃに怒りたくなることもあるし
罵詈雑言を吐きたくなることもある


When you're chewing on life's gristle
Don't grumble - give a whistle
And this'll help things turn out for the best
And -
人生の苦みを噛み締めた時は
文句を言わずに口笛を吹こう
それがうまくいくかもしれないから


Always look on the bright side of life
Always look on the light side of life
だからいつも人生の輝いている方を見ていよう
人生の明るい方を見ていようよ

車で走るサムの上空には満点の星空がある。彼女の生き方、人生を讃えるかのように星は光り輝き、その先の未来の輝かしさを暗示するかのように幾つもの流れ星が流れる。
このドラマ、パメラ・アドロンは、何があっても前を向いていこう、そして何気ない家族とのひとときや毎日を大切に生きようということを、さりげなくも強く私たちに伝えてくれるのだ。

2022年エミー賞受賞結果

2022年のアメリカTVドラマの祭典エミー賞が終了した。こうして今年のドラマの顔が決まった訳だが、蓋を開ければ予想通りの受賞作もある一方で、疑問に思うような受賞も。予想と受賞結果とあわせて今年の感想について書きたい。

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●ドラマ部門


【作品賞】

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予想:サクセッション
結果:サクセッション
作品賞は納得の「サクセッション」である。これはシーズン毎に面白さを更新しているので至極当然の結果だろう。今年「も」無冠に終わった「ベター・コール・ソウル」はファイナルシーズンに期待なのだが、選考対象となる来年までライバルが現れないかかなり心配。とにかく「イカゲーム」が受賞しなくて良かった!


【主演男優賞】

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予想:ボブ・オデンカーク(ベター・コール・ソウル)
結果:イ・ジョンジェイカゲーム)
やはり話題性の強さにエミー会員も引っ張られてしまったのか、という印象。イ・ジョンジェの演技自体は全く悪くないのだが、他の候補を越えるほどかというと疑問。


【主演女優賞】

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予想:ゼンデイヤユーフォリア
結果:ゼンデイヤユーフォリア
これはもう誰もが納得の受賞だろう。ゼンデイヤ自身が皆から愛されている証拠でもあるし、「ユーフォリア」は彼女無くして成り立たないドラマだ。


助演男優賞

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予想:ジョン・タトゥーロ(セヴェランス)
結果:マシュー・マクファディン(サクセッション)
これは予想を外した。「サクセッション」最終話での鳥肌の立つような演技(そして展開)で言えば全く異論のない受賞だ。


助演女優賞

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予想:レイ・シーホーン(ベター・コール・ソウル)
結果:ジュリア・ガーナー(オザーク)
まさかジュリア・ガーナーが同じ役で3度目の受賞をするとは思わなかった。業界内評価が高い「オザーク」だけど、巷で本当に観ている人はいるの?そして「ベター・コール・ソウル」はエミー会員に何を嫌われてしまっているんだろうか?


【監督賞】

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予想: ベン・スティラー(セヴェランス)
結果:ファン・ドンヒョクイカゲーム)
今年のエミー賞で最も納得がいかなかった部門がこの監督賞だ。ベン・スティラーカリン・クサマの圧倒的なサスペンスの演出力、マーク・マイロッドのパワフルな画作りを超える瞬間が「イカゲーム」に果たしてあっただろうか?

 


脚本賞

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予想:ジェシー・アームストロング(サクセッション)
結果:ジェシー・アームストロング(サクセッション)
「サクセッション」の最終話の受賞は至極当然の結果。この作品、そしてTVドラマという土台を大きく底上げしたかのようなエピソードだった。

 


●コメディ部門

【作品賞】

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予想:アボット・エレメンタリー
結果:テッド・ラッソ
今回一番問題だと感じているのがコメディ部門である。「テッド・ラッソ」が前シーズンを上回る出来だったのであれば受賞も納得なのだが。他の候補も大概の作品ばかりで、これというパワーを持った候補作が無い。有力視されていた「アボット・エレメンタリー」すらも「ジ・オフィス」のフォーマットとキャラクターをなぞった焼き直しでしかないので、来年に向けてパワーある作品が生まれることを期待したい。


【主演男優賞】

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予想:スティーヴ・マーティン(マーダーズ・イン・ビルディング)
結果:ジェイソン・サダイキス(テッド・ラッソ)
面白みのない2年連続の受賞。スティーヴ・マーティンが秀でているということでも無いのだが、消去法で選ばれたような気がしてならない。


【主演女優賞】

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予想:クインタ・ブランソン(アボット・エレメンタリー)
結果:ジーン・スマート(Hacks)
これも昨年と同じく2年連続の受賞。いつからエミーはこんなにも保守的になってしまったんだろうか。


助演男優賞

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予想:アンソニー・キャリガン(バリー)
結果:ブレット・ゴールドステイン(テッド・ラッソ)
ロイ・ケントというキャラクターの良さが全く活かされなかったにも関わらず謎の受賞。


助演女優賞

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予想:ケイト・マッキノン(サタデーナイトライヴ)
結果:シェリル・リー・ラルフ(アボット・エレメンタリー)
ドラマ自体は微妙だがシェリル・リー・ラルフの受賞スピーチ、もとい歌唱スピーチは凄かった。


【監督賞】

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予想:ビル・ヘイダー(バリー)
結果:M・J・デレイニー(テッド・ラッソ)
なぜ「テッド・ラッソ」はこんなにも評価されているんだろうか?シーズン1は傑作だったが、守りに入ったシーズン2は本当に評価に値するのか?ビル・ヘイダーが今回も監督賞の受賞を逃す。そろそろ評価してやってくれ!


脚本賞

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予想:ステファニー・ロビンソン(シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア)
結果:クインタ・ブランソン(アボット・エレメンタリー)
フォーマットどころかパイロットの展開すらも「ジ・オフィス」に酷似していた「アボットエレメンタリー」の第一話が受賞とは・・・

 


●リミテッドシリーズ部門

【作品賞】

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予想:ホワイトロータス
結果:ホワイトロータス
個人的にもどハマりした「ホワイトロータス」が納得の受賞。グランドホテル形式のお手本のような構成とクセだらけのキャラクターの会話劇、俳優陣の演技、絶景のハワイのショット、すべての点で作品賞に値している。有力視されていた「DOPESICK」は結局1部門のみに終わった。


【主演男優賞】

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予想:マイケル・キートン(DOPESICK)
結果:マイケル・キートン(DOPESICK)
さすがに他の追随を許さない圧巻の演技だった。もちろんの受賞。


【主演女優賞】

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予想:マーガレット・クアリー(メイドの手帖)
結果:アマンダ・セイフリッド(ドロップアウト
話題性で受賞を決めるのは違うんじゃ無いか。あんなにも薄っぺらく葛藤も何も無いキャラクターを演じて主演女優賞とは笑ってしまう。


助演男優賞

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予想:マーレイ・バートレット(ホワイトロータス
結果:マーレイ・バートレット(ホワイトロータス
「パム&トミー」のセス・ローゲンの可能性もあると思っていたが、同じコメディでもバートレットに軍杯が上がった。


助演女優賞

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予想:ケイトリン・デヴァー(DOPESICK)
結果:ジェニファー・クーリッジ(ホワイトロータス
ケイトリン・デヴァーのヤク中演技はゼンデイヤのそれと並ぶと思っていたが、ここはドラマを引っ掻き回す助演どころか主演と言ってもいいジェニファー・クーリッジが受賞。スピーチ終了のBGMが流れ始めると踊り出してしまうパワフルさもさすがだった。


【監督賞】

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予想:ヒロ・ムライ(ステーション・イレブン)
結果:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
脚本賞はマイク・ホワイトだろうと思っていたが、まさか監督賞も受賞するとは。

 


脚本賞

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予想:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
結果:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
脚本賞もホワイト。ここで「ホワイトロータス」の作品賞の受賞は確信した。

 

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以上が主要部門の受賞結果とその感想である。総じて見ると話題性に引っ張られた受賞が多い印象で、本当に作品自体が純粋に評価されているのか?と思ってしまう。先にも述べたようにコメディ部門に関しては保守的に走った結果、面白みのない受賞結果となった。今年のホストを務めたキーナン・トンプソンやTVアカデミーの会長も式の中で述べていたが、年々増加する番組とプラットフォームに視聴者は追いつかない状況である。(ボーウェン・ヤンの言うようにHBO Maxのように知らぬ間に消える番組も多くある訳であるし)
「誰もが面白いと思う作品」という評価に流されずに、限られた時間の中で本当に面白い作品を見つけることが、我々視聴者にとっても、エミー会員にとっても今後一番の課題になってくるだろう。

2022年エミー賞受賞予想

毎年恒例となっている、アメリカTVドラマの祭典エミー賞について、今年の各主要部門の受賞を主観、下馬評から予想してみた。


●ドラマ部門

【作品賞】

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予想:サクセッション
昨年は「ん?」と思うようなノミネートが多かったが、今年は納得のノミネート揃いという印象。エミー常連の「This Is Us」の満を辞したファイナルシーズンがsnubされたのも驚きだが、個人的には「イカゲーム」の過大評価も気になる。同じ韓国なら「パチンコ」の方がよほど良くできたドラマなのに!
新顔の「セヴェランス」、「イエロージャケット」のノミニーも嬉しいし、そろそろ無冠の帝王「ベター・コール・ソウル」が受賞しても良い頃とは思うんだけど、やはり面白さとクオリティが抜きん出ていた「サクセッション」が受賞だろう。


【主演男優賞】

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予想:ボブ・オデンカーク(ベター・コール・ソウル)
そろそろオデンカークが受賞しても良いだろうと予想。現にシリーズで過去最高の演技だった。ただ、来年の選考対象となるファイナルシーズンでの受賞に持ち越しになる可能性が高いのも事実。対抗馬は、前哨戦や下馬票を見る限り「イカゲーム」のイ・ジョンジェと予想。


【主演女優賞】

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予想:ゼンデイヤユーフォリア
ファイナルシーズンも残念ながらコケた「キリングイヴ」組の受賞は無いだろうし・・・となるとメラニー・リンスキーゼンデイヤだが、「ユーフォリア」のキレと泣きで圧巻の凄味を見せたゼンデイヤが受賞だろう。


助演男優賞

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予想:ジョン・タトゥーロ(セヴェランス)
「セヴェランス」での哀愁ある演技が印象的だったタトゥーロだろう。「サクセッション」組はキーラン・カルキンはじめ3人ノミネートなので相打ちになる可能性が高い。


助演女優賞

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予想:レイ・シーホーン(ベター・コール・ソウル)
ここまで演技が評価されているのにも関わらず初ノミネートであることすら驚きのレイ・シーホーンが受賞するはず。
対抗馬はパトリシア・アークエットサラ・スヌークシドニー・スウィーニーだろう。


【監督賞】
Jason Bateman, “Ozark” (“A Hard Way to Go”)
Hwang Dong-hyuk, “Squid Game” (“Red Light, Green Light”)
Karyn Kusama, “Yellowjackets” (“Pilot”)
Mark Mylod, “Succession” (“All the Bells Say”)
Cathy Yan, “Succession” (“The Disruption”)
Lorene Scafaria, “Succession” (“Too Much Birthday”)
Ben Stiller, “Severance” (“The We We Are”)


予想: ベン・スティラー(セヴェランス)
ベン・スティラージェイソン・ベイトマンの名前を見て本当に監督賞か?と一瞬目を疑う。緊迫感ある最終話だったセヴェランスで、前作「エスケープ・アット・ダンネモラ」で受賞を逃した雪辱を果たすと予想。
対抗馬は「イエロージャケット」のカリン・クサマか、美しいショットが流石だった「サクセッション」のマーク・マイロッド。


脚本賞
Jesse Armstrong, “Succession” (“All the Bells Say”)
Dan Erickson, “Severance” (“The We We Are”)
Hwang Dong-hyuk, “Squid Game” (“One Lucky Day”)
Ashley Lyle and Bart Nickerson, “Yellowjackets” (“Pilot”)
Jonathan Lisco, Ashley Lyle and Bart Nickerson, “Yellowjackets” (“F Sharp”)
Chris Mundy, “Ozark” (“A Hard Way to Go”)
Thomas Schnauz, “Better Call Saul” (“Plan and Execution”)


予想:ジェシー・アームストロング(サクセッション)
非常に予想が難しいが、サスペンスとコメディがない混ぜになった驚異の「サクセッション」の最終話と予想。

 

●コメディ部門

【作品賞】

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予想:アボット・エレメンタリー
コメディの予想が今年一番難しい。「バリー」も「テッド・ラッソ」も残念ながら前シーズンを越える出来ではなかったし、「マーベラス・ミセス・メイゼル」も受賞には弱い。常連で唯一前作を超えるクオリティだったのは「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」なのだが、これが今年の作品賞の顔かと言うと違うだろう。となると、受賞は新顔の「アボット・エレメンタリー」か「マーダーズ・イン・ビルディング」なのだが、個人的にはどちらも乗れなかったのが辛いところ。


【主演男優賞】

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予想:スティーヴ・マーティン(マーダーズ・イン・ビルディング)
グローバー、ヘイダー、サダイキスの3名は受賞経験があることと、今シーズンのクオリティを考えると受賞は無いかと思う。マーティン・ショートの受賞の可能性もあるが、少し過剰な演技が気になったので、同じマーティンでもスティーヴに一票。


【主演女優賞】

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予想:クインタ・ブランソン(アボット・エレメンタリー)
2年連続のジーン・スマートの受賞の可能性もあるが、上記の作品賞予想から「アボット・エレメンタリー」が席巻する可能性が高い。悲しいかな「インセキュア」はファイナルシーズンながら作品賞もsnubされて「ブラッキッシュ」と同じ運命を辿り、イッサ・レイも受賞はやはり難しいだろう。


助演男優賞

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予想:アンソニー・キャリガン(バリー)
作品としての評価はさておき、シーズン毎に出番を増やしている面白立ち位置を確立したノーホー・ハンクことアンソニー・キャリガンと予想。対抗馬は同じく「バリー」で独立したエピソードが多かったエンリー・ウィンクラーか。


助演女優賞

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予想:ケイト・マッキノン(サタデーナイトライヴ)
前哨戦のハリウッド批評家協会賞では「Hacks」のハンナ・エインビンデルが受賞していたが、日本では観られないため予想し難い。ただ、「アボット・エレメンタリー」組、「テッド・ラッソ」組のキャスト陣が今回良かったとは到底思えないので、ここは今季でSNL卒業となったケイト・マッキノンが優秀の美を飾ってほしいと予想。


【監督賞】
Lucia Aniello, “Hacks” (“There Will Be Blood”)
Jamie Babbit, “Only Murders in the Building” (“True Crime”)
Cherien Dabis, “Only Murders in the Building” (“The Boy From 6B”)
Mary Lou Belli, “The Ms. Pat Show” (“Baby Daddy Groundhog Day”)
MJ Delaney, “Ted Lasso” (“No Weddings and a Funeral”)
Bill Hader, “Barry” (“710N”)
Hiro Murai, “Atlanta” (“New Jazz”)


予想:ビル・ヘイダー(バリー)
これは間違いなくビル・ヘイダーだろう。前シーズンでも自ら監督した「バリー」の傑作エピソード、もといTVシリーズ界でも名を残すだろう名作の「ronny/lily」で監督賞の逃すというまさかの結果だったが、今回もバイオレンスとユーモアのバランスが絶妙だった「710N」が受賞しない訳がない。シーズンを通せばそこまでではないのだが、傑出したエピソードだ。


脚本賞
Lucia Aniello, Paul W. Downs and Jen Statsky, “Hacks” (“The One, the Only”)
Quinta Brunson, “Abbott Elementary” (“Pilot”)
Bill Hader and Alec Berg, “Barry” (“starting now”)
Alec Berg and Duffy Boudreau, “Barry” (“710N”)
Steve Martin and John Hoffman, “Only Murders in the Building” (“True Crime”)
Jane Becker, “Ted Lasso” (“No Weddings And A Funeral”)
Sarah Naftalis, “What We Do In The Shadows” (“The Casino”)
Stefani Robinson, “What We Do In The Shadows” (“The Wellness Center”)


予想:ステファニー・ロビンソン(シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア)
作品賞は逃すとしても脚本賞は「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」の傑作エピソード「ウェルネスセンター」が受賞と予想。ギャグとツイストが入り混じった今作の到達点。脚本家のロビンソンは「アトランタ」の脚本チームにも名を連ねており今後も目が離せない存在かもしれない。

 


●リミテッド/アンソロジーシリーズ部門

【作品賞】

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予想:ホワイトロータス
話題性と面白さから言えば「ホワイトロータス」が一番だろう。個人的には「パム&トミー」も良かったが。
対抗馬は「DOPESICK」になると思われるが、シリーズモノとしての面白さに欠いていたので個人的には無し。


【主演男優賞】

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予想:マイケル・キートン(DOPESICK)
上記に通り「DOPESICK」はドラマとしての面白さはないのだが、演技面でははやり貫禄の違いを見せつけたマイケル・キートンと予想。個人的には「ステーション・イレブン」のヒメーシュ・パテルも良かったのだが、出番がもう少しあれば・・・と思うところ。


【主演女優賞】

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予想:マーガレット・クアリー(メイドの手帖)
下馬評では「ドープシック」のアマンダ・サイフリッドの予想だが、個人的にはまったくありえない。こんなにも薄っぺらいキャラクターを演じて受賞なんてあるだろうか。個人的に推したい「メイドの手帖」(作品賞にノミネートされていないことも驚きだが)での圧巻の演技だったマーガレット・クアリーに一票。


【監督賞】
Hiro Murai, “Station Eleven”
Michael Showalter, “The Dropout”
Francesca Gregorini, “The Dropout”
Danny Strong, “Dopesick”
John Wells, “Maid”
Mike White, “The White Lotus”


予想:ヒロ・ムライ(ステーション・イレブン)
ジョン・ウェルズ、マイク・ホワイトの確かな演出力も良かったが、ここは「ステーション・イレブン」で圧倒的な1話を作り上げたヒロ・ムライと予想。同じドラマ内でも差の違いを見せつけていたし、ムライが全話監督していれば間違いなく作品賞に食い込めただろう。


脚本賞

Elizabeth Meriwether, “The Dropout”
Sarah Burgess, “Impeachment: American Crime Story”
Molly Smith Metzler, “Maid”
Patrick Somerville, “Station Eleven”
Danny Strong, “Dopesick”
Mike White, “The White Lotus”


予想:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
ヘンテコな作りながら最後に大団円を迎えた「ステーション・イレブン」はさすがパトリック・ソマーヴィルという作りだったが、同じくヘンな話とすれば「ホワイトロータス」を評価したい。

 

受賞予想は以上。果たして今年はどんな作品、そして誰が受賞するのか。気になる授賞式は日本時間の9月13日9時から開始する。

 

映画の面白さを思い出させてくれた「NOPE/ノープ」

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ジョーダン・ピールの最新作「NOPE/ノープ」を観た。

ピールの初監督作の「ゲット・アウト」は楽しめたものの、2作目の「アス」があまり好きでなかったこともあり、正直今作もあまり期待はしていなかった。


しかし、完全に度肝を抜かれた。久しぶりに“映画”を観た、という興奮で圧倒されてしまった。


物語のテーマやメタファーについては、後からパンフレットやインタビューなどで知ったが、何よりも今作で夢中になったのはそこではない。映画の楽しさが詰まっていたからだ。

 

(以降、物語の展開に少し触れています)


主人公のOJ(ダニエル・カルーヤ)とエメラルド(キキ・パルマー)の兄妹は、自ら営む牧場でUFOらしき飛行物体を目撃する。そしてそれを撮影しようとする。


ここに至るまでの紆余曲折の話もあるのだが、シンプルにまとめればこういった話である。


兄妹は知り合ったカメラマンのや家電屋のアルバイトで即席の撮影チームを作り、「Gジャン」と名付けられた飛行物体をカメラに収めようとする。


このシーケンスの何が素晴らしいかを文字で語るほど野暮なことは無いので詳細は控えるが、普段であれば結成することも無さそうな面々が「即席」の「チームを結成する」というところが、まずアツい。


Gジャンを撮影するために彼らはカメラをセットし、スカイダンサーと呼ばれる風船式で動く呼び込みのマスコットを牧場内に配置。馬に乗ったOJが位置につく。そこで作戦の合図と同時に馬が走り出す。この瞬間、“映画”も動き出す。


それぞれが持ち場での役割を果たそうとするサスペンスと、俯瞰カメラのショットが上空からGジャンと主人公を捉え、そのままグッと地上に近づいていく大胆で豊かなカメラワーク、喰うか喰われるかの状況を盛り立てるフルオーケストラの劇伴、そのすべてが一体となって“映画のクライマックス”が最高潮に達する。


なんだろう、例えるならば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のクライマックスのような息を呑むサスペンスかつ完璧なハイライトで鳥肌が立ちっぱなしだった。


さらにこれだけで終わらないのが今作のスゴいところで、多くのリファレンスや張られた伏線の回収までも本当に見事である。


何よりも本当に豊かなショットに溢れていて、それらを全てを挙げるとキリがない。OJと馬の肩越しに上空を捉えた夜空の不穏さ、カメラが大きく空をパンすると雲の切れ間から時折覗くGジャンの壮大かつホラーなシーケンス、ジェームズ・ワンもびっくりな血塗れの雨が降りそそぐ屋敷のロングショット、窓越しに流れる血の赤(これが冒頭のシーンで見られるテーブルクロス越しの血の繰り返しであることはここで触れておきたい!)。ジュピターパークの巨大風船が上空に浮かぶ滑稽さも忘れられない。
とにかくギョッとするようなシーンから、ユニークなショットまでこんなにも充実した場面に溢れた映画は久しぶりだった。


個人的な話になるが、最近映画を観るときに物語ばかりに気を取られていて、話がつまらない=作品として面白く無い、と決めつけていたことが多かったように思う。
だが、映画というものはそうではない。すべての要素が渾然一体となって、一つ一つのショットが成り立ち、それがさらに合わさって一本の映画となっている。
何を今更と鼻で笑われてしまうけど、そんな当たり前のことに、そして映画を観るという面白さに改めて気がつかせてくれてのが、この「NOPE/ノープ」だった。

もうすぐ終わりを迎える「ベター・コール・ソウル」について

つくづくとんでもないドラマシリーズだなと思ってしまう。
今回のシーズン6での幕切れが発表された「ベター・コール・ソウル」も残すところ1エピソードとなった。

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(以降ドラマの核心について触れています)


終盤でサスペンスフルな展開を見せたラロとの闘いも決着し、いよいよ「ブレイキング・バッド」以降のソウルの“エピローグ”に焦点が当てられる。


アルバカーキでの騒動から逃げてオマハに身を隠していたソウルは、やはり慎ましく暮らすことなど出来ずに悪事に手を染めてしまう。そんな11話のエピソードタイトルは“Breaking Bad”。
その名の通り、本家シリーズの主役であるウォルターとジェシーが回想シーンの中で登場するのだが、このタイトルを冠したことと、2人の登場は単なるファンサービスではない事が分かる。“break bad”というそもそもの意味に立ち帰ると、“慣習に従っていた人がその道に逆らう”というもの。自らの身に染み付いた悪の道からは逃れる事ができないソウルがその時に思い出すのが、過去に“道を逆らった”2人、ウォルターとジェシーであり、登場は必然なのである。


この回想シーンというのはソウル目線で思い起こされているが、ここに自らの姿とウォルターとジェシーを重ね合わせたかどうかは分からない。ただ、ソウルの起こした行動の動機となっていることは間違いない。彼の運命を変えた、もしくは彼の生きるべき道を示した出会いなのだから。


そして続く12話では、ソウルのパートナーであったキムが再び登場し、彼と別れたその後が描かれる。彼女も“break bad”した1人であり、弁護士を辞めた以降は民間企業に勤めて退屈な日常を過ごしている。冒頭、彼氏であろう男にマヨネーズの買い物を頼んだが、結局マヨネーズ“らしい”何かで“妥協する”というシーンは、キムの現在を端的に表している。
そこにかつての“悪友”であるソウルから職場に電話がかかってくる。それは抗い難い悪への誘いである。再びソウルに身を委ねるか、過去と決別してこの日常を生きるか。この時の受話器に耳を傾ける彼女、レイ・シーホーンの表情がとてつもなく素晴らしい。


最終的にキムは贖罪の道を選ぶ。過去の罪を償い、バスで嗚咽する彼女を長い1ショットで捉えるカメラに、なんて物哀しくてエモーショナルな場面なのだろうと観てるこちらも涙してしまう。
ブレイキング・バッド」というのは、特異なキャラクターとサスペンスを主軸に置いたドラマシリーズであったが、この「ベター・コール・ソウル」においては“キム”という罪の意識を持ったキャラクターを一人置くことで、ドラマとしてより一層奥深い話になっているのかと気付かされる。こんなにも情緒的なシーンは「ブレイキング・バッド」では描かれなかったし、到底描くことができなかった。


そんなキムとジェシーが、過去に思わぬところですれ違っていたことが描かれる。2人はソウルとウォルターという悪に導かれてしまった、ある意味での犠牲者であり、1人は悪事と縁を切り、1人はこれから悪事に手を染めることになる。大雨の中に駆け出すキムと、屋根の下に立ち尽くすジェシーの対照的な構図は、思わず溜息が漏れてしまうような見事さだ。


一方のソウルは、逃避先の街でも悪事を働き、仲間の制止も聞かずに窮地に陥る。リスクを冒す必要のない場面で、敢えて危険な状況に手を出していく姿は、内心で「捕まりたい」という気持ちがどこかにあるのではないかと勘繰ってしまう。


今回のエピソードでの印象的なシーンの一つとして、老人に対し自らの名を偽り騙っていたソウルの素性が、ウェブ上で流れていた過去のCMによってバレてしまう場面がある。
これまでエピローグのシーンはモノクロで描かれているのだが、パソコンに映し出される過去の「ソウル・グッドマンのCM」だけが色鮮やかに彼の眼鏡に反射する。それはまるで、ソウル・グッドマンの頃こそが彼自身が“生きていた”時代であり、いまの逃避先での暮らしはモノクロで味気の無いようなものと表しているかのようである。
自らの過去のCMを観るソウルは、驚愕するとともにどこかハッと思い起こされたような表情をする。自分のあるべき道を思い出したかのように。

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街を後にした彼はこの先一体どこへ向かうのか。今シーズンのポスターのように再び色鮮やかな“ソウル・グッドマン”のジャケットに袖を通すことになるのか。「ベター・コール・ソウル」という旅の終わりを、文字通りに固唾を呑んで待つしか無い。

「スパイダーマン : ノー・ウェイ・ホーム」を観た

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スパイダーマン : ノー・ウェイ・ホーム」をようやく観た。「ネタバレ厳禁」が強く喧伝されていたものの、アメリカでの公開からタイムラグがあったせいでYouTubeやらニュースサイトでネタバレを食らってしまうということもあり、公開前にはおちおちネットも開けない状態だった。
そうして「ようやく」観た後の感想を一言で言えば、「めちゃくちゃ楽しかった」である。とは言え手放しで褒められるかというとそんな事は無くて、うーん・・・と思う不満もTwitterには書けないので、ここに感想を書いていきたい。

(以降ネタバレあり)

 

 

 


やっぱり興奮したのは、トビー・マグワイアアンドリュー・ガーフィールドの先代スパイダーマンの登場、かつ垣根を越えて3人が揃うという展開だったのは間違いない。スパイダーマン自体に思い入れがそこまである訳ではないが、サム・ライミ版を公開当時に観ていた身としては、出会うはずの無いスパイダーマンの歴代3人が揃う展開は本当に胸が熱くなった。


しかし、折角揃ったのにそこで生まれる会話やドラマが少し物足りないと感じてしまった。まず、アンドリュー・ガーフィールドトビー・マグワイアが登場する場面、この2人のやり取りを見たいのに、ネッドとネッドの祖母のやり取り(コメディ)がノイズに感じてしまう。(ましてやネッドの祖母は初登場であるし・・・)
続く、トム・ホランドと合流した後の理科室のくだりもストーリーが停滞してしまい、高揚感も持続せずになんだか、、、楽屋話を聞いてる気分になってしまった。


そして何よりもジョン・ワッツのアクション演出力不足。テンポは良いのだが、せっかく3人揃ってのスパイダーマンなのに目を見張るようなアクションが無いのが本当に残念だった。(もしサム・ライミが撮っていたら・・・と観ながら想像してしまった)

こうした不満はあったものの、 「アメイジング」で最後に亡くなったグウェンの後悔(続編が作られなかった故に中途半端になった話)をガーフィールドスパイダーマンが救うことで“救済”したり(この時のガーフィールドの演技が本当に最高!)、歴代ヴィランたちを牽引するウィレム・デフォーの全く衰えない最狂の演技が観れたりと楽しめた部分の方が圧倒的に多い。


脚本を手掛けたのは、エリック・ソマーズとクリス・マッケナの「Community」のコンビ。よくある30分のシットコムかと思いきや、メタ構造やタイムリープネタで他に類を見ないコメディドラマ出身の彼らは、前作の「ファー・フロム・ホーム」でもトリッキーなツイストを用意していたが、今回もまぁよくもドラマ同様にこんなめちゃくちゃでファンフィクションのような話を仕上げたものだと改めて驚く。

トム・ホランド演じるシリーズは今作で最後のようだが、3人の「スパイダーマン」が揃い踏みし、これまでの敵を成仏するという展開は、“親愛なる隣人”という名に相応しい最終作だったと思う。

エンディングで流れるのは、デ・ラ・ソウルの「The Magic Number」という曲。

その歌詞を見ると、

“3 That's the Magic Number”

3、それは魔法の数字

“Without my 1 and 2 where would there be My 3”

1と2がなければ僕の3番目は存在しないんだよ

という歌詞が先代のスパイダーマンマグワイアガーフィールド)あっての今がある、という内容とリンクして聴き返すと更に泣けてきてしまう。