悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2022年エミー賞受賞結果

2022年のアメリカTVドラマの祭典エミー賞が終了した。こうして今年のドラマの顔が決まった訳だが、蓋を開ければ予想通りの受賞作もある一方で、疑問に思うような受賞も。予想と受賞結果とあわせて今年の感想について書きたい。

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●ドラマ部門


【作品賞】

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予想:サクセッション
結果:サクセッション
作品賞は納得の「サクセッション」である。これはシーズン毎に面白さを更新しているので至極当然の結果だろう。今年「も」無冠に終わった「ベター・コール・ソウル」はファイナルシーズンに期待なのだが、選考対象となる来年までライバルが現れないかかなり心配。とにかく「イカゲーム」が受賞しなくて良かった!


【主演男優賞】

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予想:ボブ・オデンカーク(ベター・コール・ソウル)
結果:イ・ジョンジェイカゲーム)
やはり話題性の強さにエミー会員も引っ張られてしまったのか、という印象。イ・ジョンジェの演技自体は全く悪くないのだが、他の候補を越えるほどかというと疑問。


【主演女優賞】

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予想:ゼンデイヤユーフォリア
結果:ゼンデイヤユーフォリア
これはもう誰もが納得の受賞だろう。ゼンデイヤ自身が皆から愛されている証拠でもあるし、「ユーフォリア」は彼女無くして成り立たないドラマだ。


助演男優賞

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予想:ジョン・タトゥーロ(セヴェランス)
結果:マシュー・マクファディン(サクセッション)
これは予想を外した。「サクセッション」最終話での鳥肌の立つような演技(そして展開)で言えば全く異論のない受賞だ。


助演女優賞

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予想:レイ・シーホーン(ベター・コール・ソウル)
結果:ジュリア・ガーナー(オザーク)
まさかジュリア・ガーナーが同じ役で3度目の受賞をするとは思わなかった。業界内評価が高い「オザーク」だけど、巷で本当に観ている人はいるの?そして「ベター・コール・ソウル」はエミー会員に何を嫌われてしまっているんだろうか?


【監督賞】

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予想: ベン・スティラー(セヴェランス)
結果:ファン・ドンヒョクイカゲーム)
今年のエミー賞で最も納得がいかなかった部門がこの監督賞だ。ベン・スティラーカリン・クサマの圧倒的なサスペンスの演出力、マーク・マイロッドのパワフルな画作りを超える瞬間が「イカゲーム」に果たしてあっただろうか?

 


脚本賞

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予想:ジェシー・アームストロング(サクセッション)
結果:ジェシー・アームストロング(サクセッション)
「サクセッション」の最終話の受賞は至極当然の結果。この作品、そしてTVドラマという土台を大きく底上げしたかのようなエピソードだった。

 


●コメディ部門

【作品賞】

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予想:アボット・エレメンタリー
結果:テッド・ラッソ
今回一番問題だと感じているのがコメディ部門である。「テッド・ラッソ」が前シーズンを上回る出来だったのであれば受賞も納得なのだが。他の候補も大概の作品ばかりで、これというパワーを持った候補作が無い。有力視されていた「アボット・エレメンタリー」すらも「ジ・オフィス」のフォーマットとキャラクターをなぞった焼き直しでしかないので、来年に向けてパワーある作品が生まれることを期待したい。


【主演男優賞】

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予想:スティーヴ・マーティン(マーダーズ・イン・ビルディング)
結果:ジェイソン・サダイキス(テッド・ラッソ)
面白みのない2年連続の受賞。スティーヴ・マーティンが秀でているということでも無いのだが、消去法で選ばれたような気がしてならない。


【主演女優賞】

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予想:クインタ・ブランソン(アボット・エレメンタリー)
結果:ジーン・スマート(Hacks)
これも昨年と同じく2年連続の受賞。いつからエミーはこんなにも保守的になってしまったんだろうか。


助演男優賞

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予想:アンソニー・キャリガン(バリー)
結果:ブレット・ゴールドステイン(テッド・ラッソ)
ロイ・ケントというキャラクターの良さが全く活かされなかったにも関わらず謎の受賞。


助演女優賞

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予想:ケイト・マッキノン(サタデーナイトライヴ)
結果:シェリル・リー・ラルフ(アボット・エレメンタリー)
ドラマ自体は微妙だがシェリル・リー・ラルフの受賞スピーチ、もとい歌唱スピーチは凄かった。


【監督賞】

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予想:ビル・ヘイダー(バリー)
結果:M・J・デレイニー(テッド・ラッソ)
なぜ「テッド・ラッソ」はこんなにも評価されているんだろうか?シーズン1は傑作だったが、守りに入ったシーズン2は本当に評価に値するのか?ビル・ヘイダーが今回も監督賞の受賞を逃す。そろそろ評価してやってくれ!


脚本賞

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予想:ステファニー・ロビンソン(シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア)
結果:クインタ・ブランソン(アボット・エレメンタリー)
フォーマットどころかパイロットの展開すらも「ジ・オフィス」に酷似していた「アボットエレメンタリー」の第一話が受賞とは・・・

 


●リミテッドシリーズ部門

【作品賞】

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予想:ホワイトロータス
結果:ホワイトロータス
個人的にもどハマりした「ホワイトロータス」が納得の受賞。グランドホテル形式のお手本のような構成とクセだらけのキャラクターの会話劇、俳優陣の演技、絶景のハワイのショット、すべての点で作品賞に値している。有力視されていた「DOPESICK」は結局1部門のみに終わった。


【主演男優賞】

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予想:マイケル・キートン(DOPESICK)
結果:マイケル・キートン(DOPESICK)
さすがに他の追随を許さない圧巻の演技だった。もちろんの受賞。


【主演女優賞】

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予想:マーガレット・クアリー(メイドの手帖)
結果:アマンダ・セイフリッド(ドロップアウト
話題性で受賞を決めるのは違うんじゃ無いか。あんなにも薄っぺらく葛藤も何も無いキャラクターを演じて主演女優賞とは笑ってしまう。


助演男優賞

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予想:マーレイ・バートレット(ホワイトロータス
結果:マーレイ・バートレット(ホワイトロータス
「パム&トミー」のセス・ローゲンの可能性もあると思っていたが、同じコメディでもバートレットに軍杯が上がった。


助演女優賞

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予想:ケイトリン・デヴァー(DOPESICK)
結果:ジェニファー・クーリッジ(ホワイトロータス
ケイトリン・デヴァーのヤク中演技はゼンデイヤのそれと並ぶと思っていたが、ここはドラマを引っ掻き回す助演どころか主演と言ってもいいジェニファー・クーリッジが受賞。スピーチ終了のBGMが流れ始めると踊り出してしまうパワフルさもさすがだった。


【監督賞】

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予想:ヒロ・ムライ(ステーション・イレブン)
結果:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
脚本賞はマイク・ホワイトだろうと思っていたが、まさか監督賞も受賞するとは。

 


脚本賞

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予想:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
結果:マイク・ホワイト(ホワイトロータス
脚本賞もホワイト。ここで「ホワイトロータス」の作品賞の受賞は確信した。

 

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以上が主要部門の受賞結果とその感想である。総じて見ると話題性に引っ張られた受賞が多い印象で、本当に作品自体が純粋に評価されているのか?と思ってしまう。先にも述べたようにコメディ部門に関しては保守的に走った結果、面白みのない受賞結果となった。今年のホストを務めたキーナン・トンプソンやTVアカデミーの会長も式の中で述べていたが、年々増加する番組とプラットフォームに視聴者は追いつかない状況である。(ボーウェン・ヤンの言うようにHBO Maxのように知らぬ間に消える番組も多くある訳であるし)
「誰もが面白いと思う作品」という評価に流されずに、限られた時間の中で本当に面白い作品を見つけることが、我々視聴者にとっても、エミー会員にとっても今後一番の課題になってくるだろう。