悪魔の吐きだめ

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青春映画の新たな傑作「ハーフ・オブ・イット」

Netflixオリジナル映画(実際にはオリジナルではないのかな?)の「ハーフ・オブ・イット」が、近年稀に見るめちゃくちゃ良くできた青春ラブコメディ映画だった。従来のラブコメや学園映画の定石を踏みつつ、新たな視点をミクスチャーしたことで、とても新鮮に感じる作品なのだ。

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物語は、アメリカのとある田舎町に住む高校生の主人公エリーがアメフト部のポールから、彼が憧れる学校イチの美女アスターに宛てたラブレターの代筆を頼まれるところから物語が始まる。エリーには文才があるのだが、スポーツマンのポールはまるでダメなので、ラブレターから文通、さらにメールのやり取りになってもエリーに代理になってもらうのだが、ポールの振りをしたエリーとアスターが通じ合うようになり…というストーリー。

序盤のいわゆる“サエない女子”が男子を応援していく「よくある」展開になるかと思いきや、エリーの秘めた気持ちから起きるツイストが見事で、徐々に気持ちが入り乱れる3人の関係性がすごく面白い。

特に中盤のダイナーのシーンが素晴らしくて、ポールとアスターのデートをエリーが外から見守っているのだが、話の噛み合わない2人にエリーがメールでポールの振りをして助け舟を出し、メール上で会話が盛り上がるものの張本人のポールは蚊帳の外、という構図も笑えるし、エリーとアスター、エリーとポールそれぞれのメッセージのやり取りが、画面の左右に映し出される演出もうまく(ここでのメッセージ内に絵文字を使う・使わない問題も後になって効いてきてくるからさらに感心する)、まさにキャラクターとその関係性を現す演出が阿吽の呼吸でガチッと嵌った秀逸なシーンだ。

また、「よくある」にならないのはキャラクター描写もそうで、ポールのキャラはいわゆる“JOCKS”かと思いきや、実はものすごく良い奴で人種で揶揄われるエリーをかばうし、彼自身もアメフト部のスターというわけでなく補欠だったりする。アスターも学校のヒエラルキーでは上位に位置するけど自分の居場所に悩んでいたり。そんな「よくある」じゃない3人が、終盤で図らずも「よくある」を迎えてしまうからこそすごく泣ける。これぞ青春映画と唸ってしまう。


3人の人種の違いや同性愛についての描かれているけど、今作ではそれらが重要な要素だとか、それだけにフォーカスして語るべき映画では無いと思っていて、何より作品の「面白さ」というのはキャラクターと物語、これに尽きるなとしみじみ思ってしまった。一言で言えば、傑作。万人にお勧めしたい素晴らしい映画だった。