悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2020年 映画ベスト10

今年観た映画ベスト10の個人ランキング。

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第10位「The Forty-Year-Old Version」

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かつて有能な若手として期待されていた主人公のラダが、40歳を前にして自分の生き方を見直すコメディである今作。タイトルは「40 Year-Old Vergin」(40歳の童貞男)のパロディとなっていて、あちらでは生き方を変えるために主人公は自分が大事にしていたフィギアを捨てる場面があるが、対する今作では自分が好きことを終始貫く主人公が描かれているのが面白い。コメディとしても十分笑えるし、自分の生きる道に悩む物語としても秀作。

 

第9位「半島(ペニンシュラ)」

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3年前の2017年の映画ベストにも選出した「釜山行き」の続篇。前作が電車内という限定された空間内での縦横の移動を活かしたギミックの面白さがあったが、今回は野に放たれた大量のゾンビと、マッドマックス的な世紀末軍団との三つ巴の闘いを軸としてアクションに仕上げた。中盤は怠い展開で失速するものの、物量勝負で仕掛ける桁違いのカーアクションだけでも観る価値あり。

 

第8位「ヴァスト・オブ・ナイト」

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Amazonオリジナルで配信された今年一番独創性に溢れた作品。プロット自体決して新しくはないが、ほぼラジオドラマ的に進む本編に対して、編集やカメラワーク、演出のギミックが異様なテンションで展開する様はまさに新感覚SF。メインの舞台となるラジオ局と電話交換機までの物理的な隔たりによる不便さを活かしたサスペンス、ふとした会話の中で気づかされる人種の壁など細かい点においても描き方が巧みで唸ってしまう。

 

第7位「もう終わりにしよう。」

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個人的に新作が待ち遠しい監督の一人チャーリー・カウフマンの新作として、楽しみにしていたがその期待と予想を遥かに上回る怪作。トニ・コレットデヴィッド・シューリスの待つ相手の実家の違和感、会話の成り立たなさ、一向に視界が開けない雪道のドライブなど悪夢ようなシーンが続く中、得意のメタ構造と哲学的問いを織り交ぜて視聴者を混乱させる。理解出来ずともこの不穏さを感じるために観る価値はある。

 

第6位「フェアウェル」

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描かれる場所も言葉も中国なのに、れっきとしたアメリカ映画という不思議な立ち位置の今作。描かれる祖母とオークワフィナ演じる主人公とその家族の“優しい嘘”の交流の物語が泣けてしょうがないのは、誰しも身に覚えのある普遍的な家族の物語だからだろう。アメリカ映画とか中国映画なんてレッテルを貼ることすら今後なくなるかもしれない。

 

第5位「mid90s」

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コメディ俳優ジョナ・ヒル初の監督作は、ジャド・アパトー一派の作風とは違い、アメリカの片隅で生きるスケボー少年たちの刹那を切り取った青春映画。しかし、根底にあるのは「スーパーバッド」と変わらず“あの頃楽しかったね”の話であり、胸が熱くなる。タイトル通り“90年代中期”の空気感を再現するべく使用されるノイズの乗った16ミリカメラの映像も良い。

 

第4位「ロッジ」

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近年観たホラーの中でも抜群に面白かった今作。閉ざされたロッジを舞台にした設定はありきたりだが、執拗に前後移動を繰り返すカメラで観ている側まで錯覚を起こし、話の“オチ”が分かった後に更にスピードを上げてアクロバット着地。とにかく凄いものを撮ってやるぞ!という気概が作品に滲み出てる。主演のライリー・キーオの狂った演技も見事。

 

第3位「1917」

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何かとワンカット、ワンショットという点で語られがちだが、映画で核になるのは物語、キャラクターなんだなと今作を観てしみじみ思った。正直言えば前半は少し退屈なんだけど、後半のある場面からストーリーを牽引する力が一気に変わり、その瞬間にこれまで顔がはっきり映らなかった主人公の正面にグッとカメラが寄る場面が凄い。ここから始まる決意や力の入り方が前半までのそれとはまるで違ってて、物凄い高揚感である。もちろん、ワンショットの撮影も見所ではあるけれど、ワンカットワンカットが惚れ惚れするほど美しくて、しかも残酷なシーンほどエモーショナルなカットが続いていく。戦争の最中で実際にはこんな風景(ショット)は有り得ないだろうなと思いながらも、まさに“映画的”な場面で感動しきりだった。

 

第2位「ジョジョ・ラビット」

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タイカ・ワイティティでしょ?とタカを括っていると、とてつもなくロマンチックな話に良い意味裏切られる。反戦映画ではあるし、そういう意味でクドい場面も(ワイティティ演じるヒトラーのキャラも含め)あるものの、それ以上の映画的な瞬間、実際にはあり得ないけど映画だからこそ成立する瞬間がいくつもあり素晴らしい。僕はフィクションが現実を越える瞬間に弱すぎる。

 

第1位「ハーフ・オブ・イット」

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今年のナンバーワンは今作「ハーフ・オブ・イット」。ありがちな青春ラブコメに見せかけて、後半で急展開する捻りを効かせたストーリーの面白さといい、コメディの落とし所とドラマのバランスの絶妙さといいどの点を取っても素晴らしい。そして何より登場人物が全員生きている。人種の違いや同性愛についての描かれているが、今作はそれだけにフォーカスして語るべき映画では無いと思っていて、何より作品の「面白さ」というのはキャラクターと物語、これに尽きるなとしみじみ思ってしまった。一言で言えば、傑作。万人にお勧めしたい素晴らしい映画だからこそ、今作を今年のナンバーワンとしたい。

詳しくは以前書いた下記を。