悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2020年の記録(読んだもの、聴いたもの)

毎月の観た映画や読んだ本のことを備忘録的に書こうと思って始めた毎月の記録も、結局志半ばで投げ出してしまって情けない…中途半端なままにしておくのも嫌ではあるので、昨年8月で終わってしまっていた日記ならぬ月記について、9月以降分をまとめて「2020年の記録」として、観たもの読んだものについて書きたいと思う。

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2020年は一瞬で終わってしまったように感じる。一年の半分以上を家で過ごしてたせいか、家にいると昼以降の時間の進み方が体感的に異様に早くて、昼を過ぎるとあっという間に夜になって、その頃にようやく仕事のやる気が出てくる、みたいな変なライフサイクルが続いて調子が狂ってしまった。通勤電車が本当に大嫌いなので、最初の頃は在宅ワーク万歳という感じだったけど、こんな生活が続くとさすがに会社行きたくなってしまった。
そんな家ナカ時間で増えたのが、本を読む時間とラジオを聴く時間だった。


本のこと
読書に関しては、もともとめちゃくちゃ遅読&積読癖があるので本が溜まりに溜まってしょうがない状態だったけど、たぶん去年の4倍ぐらいのペースで今年は読めた。とはいえその分買ってしまってもいるので、積読の量は減ってないのだけど…


昨年見つけたお気に入り著者は、ジム・トンプスンで、秋頃に初めて「ポップ1280」を読んで面食らってしまった。ブラックユーモアというか、主人公と話運びがヤバすぎて笑っちゃうという異様な本で、元々サイコパスなキャラクターが好きというのもあるけどこれはホント衝撃の体験だった。これを「聖なる鹿殺し」のヨルゴス・ランティモスが映画化する噂があったんだけど結局どうなったんだろうか。「鹿殺し」も近年で最もイカしたサイコパス映画なので、間違いなく面白く仕上げてくれるだろうと期待している。「ポップ1280」以降も着々と古本屋でトンプスンの著者を買い集めてる状態だけど、今のところ今年読めたのは「内なる殺し屋」と「残酷な夜」の2冊。どちらも面白かったが、やっぱ「ポップ」の方が個人的には断然好き。

ポップ1280(新装版) (海外文庫)

ポップ1280(新装版) (海外文庫)

 

他に、面白かった本は、元ディズニーCEOのロバート・アイガー著の「ディズニーCEOが実践する10の原則」。タイトルだけ聞くとビジネス書と思われがちだが、ABCテレビの雑用係として入社したロバート(ボブ)・アイガーが、ディズニーの社長になるまでのサクセスストーリーとしてめちゃくちゃ面白い一冊。ABCテレビ時代の話で「ツイン・ピークス」の地上波放送を決めたのも彼だったり(ここでのデヴィッド・リンチとの諍いについても読みどころ)、「NYPDブルー」などヒットも飛ばして社長に。その後ディズニーに局を買収されてからの、ピクサーとの和解、スター・ウォーズ、マーベル、FOX買収までの話など、盛りだくさん。何となくエンタメ業界の動向を聞きかじっていた自分にとっても目からウロコの話もあるし、同じような人や海外ドラマ、ディズニーにちょっとでも興味ある人にはおすすめ。

ディズニーCEOが実践する10の原則

ディズニーCEOが実践する10の原則

あと、めちゃくちゃ今さらだけど、ミステリーが読みたくなってアガサ・クリスティに初めて手を出した。噂に違わぬ面白さ。ただスルスル読める分、ちょっと淡白に感じてしまう気もする。でも楽しいからまあいいかって感じで読んだのが、「そして誰もいなくなった」、「予告殺人」、「ナイルに死す」の3冊。いずれも納得の名作。

その他、岸雅彦 著「断片的なものの社会学」、岸本佐知子 著「死ぬまでに行きたい海」もとても良かった。いずれ別の機会で感想は書きたいと思う。


音楽のこと
家でラジオを聴くことが多くなった分、最新の音楽(言い方が古い・・・)を知る機会ができたというか、元々AKBやエグザイルにあまり興味なく音楽番組も観ないんだけど、ラジオだとTVに出るメジャーな人たちだけでなく、全然知らないインディーズバンドとかミュージシャンが沢山いて、当たり前すぎて今さら言うことでも無いのだけど、ヒットしてるか否かではなくて直感的に「良い」と思う音楽を知ることができて良かった。


その中でも2020年に特に好きだった曲が2曲あって、ひとつは8月の記録にも一度書いたけど、メジャーデビューしたばかりの「リュックと添い寝ごはん」の「生活」という曲。

まだ全員若干19歳のバンドだけど、甘酸っぱさとか、瑞々しさとか、青臭くささや拙さが曲の中に詰まっていて素晴らしいのだ。大人がこの曲を同じように再現しようとしても、全く同じようには表現できないだろうと思ってしまう。それぐらいこの曲には、その“若さ故の刹那なさ”みたいなものが閉じ込めてあるように感じる。そして、聴く人に”かつてのあの時”を思い起こさせる共通項のようなものが、この曲の根底にはあると思っている。


二つ目の曲は、ラッパー兼トラックメイカーの「ぜったくん」が歌う「Parallel New Days」。

普段ラップなんか聞かないのだけど、キャッチーなメロディーに乗せて歌われる歌詞の“痛さ”みたいなところにやられてしまった。
その歌詞というのが、音楽をやってない“別次元に生きていたら”というタラレバ話の物語になっていて「今のように音楽をやっていなければ、それなりに仕事もしていて、土日に物件も見に行ってたかもしれない」という夢物語を歌いつつ、でも結局そのもう一つの世界では得るものと同じように諦めないといけないものもあると歌う。
誰しも「あの時ああしてれば良かった、この道を選んでいたらこうだったかもしれない」と思い描くことはあると思うし、自分自身いまだに今の仕事していてふと思って沈んでしまうことがある。だが、この歌で歌われる最終的に導き出される答えが「どっちの世界、どんな世界にいてもトータルの幸せは同じにできていて、今いる世界線を楽しむしかない」ということで、この曲を聴くたびに何度も胸が熱くなってしまう。
家にいると漠然とした考え事をする時間も増えて勝手に落ち込んでしまうのだけど、そんな時に聴くと少し楽になるというか、背中を優しく押されているような気持ちになる、そんな曲だった。

ちなみに洋楽・邦楽問わず2020年で個人的に気に入った曲を集めたプレイリストは下記です。