悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2020年8月の記録

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少し遅くなってしまったが8月の記録。

相変わらず夏を感じないまま終わった8月だった。
家で仕事をしている時は殆どラジオを流したままにしているのだが、そんな時にふと耳に入ってきたのが「リュックと添い寝ごはん」というバンドの“生活”という曲だった。邦楽のインディーズバンドにはまるで疎いのだが、聴いた瞬間に完全に刺さってしまった。サビのメロディーラインといい、少々拙いようなボーカルの声といいなんだか胸の奥がむず痒くなるような気持ちが押し寄せてきて、家の中で“あの頃の夏”を思い出して涙ぐんでしまった。

調べてみると、なんと彼らはまだ高校を卒業したての若干18歳だった。瑞々しさはここから来たのかと思い納得してしまった。ここ最近メジャーデビューが決まったとのことで、この衝動がいつまでも消えないでいて欲しいと願うばかり。若気の至りよ永遠なれ。


休日に出掛けた際に道中の電車で、最近復刊となった群ようこの「鞄に本だけ詰めこんで」を読む。読書エッセイとして面白いのだが、その中で「猫が好き好きでたまらなくて、飼い猫の鼻とお尻の穴にムヒを塗ったことがある。」という話があって思わず車内にも関わらず吹き出してしまった。偶然にもその日、猫カフェに入ることになったのだが、その時にもずっとこの話を思い出していて笑いがこみ上げてカワイイーなんて思っているどころじゃなかった。
群ようこの独特の視点と文体がたちまち好きになって、続けて「ネコの住所録」という動物エッセイ集を読むがやっぱり面白かった。

鞄に本だけつめこんで (新潮文庫)

鞄に本だけつめこんで (新潮文庫)

  • 作者:群 ようこ
  • 発売日: 2020/03/28
  • メディア: 文庫
 
ネコの住所録 (文春文庫)

ネコの住所録 (文春文庫)

 


あと、本屋でほぼジャケ買いに近い形で衝動買いしたのがナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー著の「フライデー・ブラック」。ニューヨークタイムズなどで絶賛されたアフリカ系アメリカ人の描くブラックユーモアに溢れた短篇集で、読んでいて思い起こしたのはジョーダン・ピールの「ゲット・アウト」やドナルド・グローバーの「アトランタ」、「ホワイト・ボイス」、「ブラック・ミラー」など。この辺が好きな人には是非お勧めしたい皮肉に溢れた一冊。

フライデー・ブラック

フライデー・ブラック

 


映画館に行った回数は相変わらず0。旧作ばかり観ているが、その中で特に良かった作品はジェームズ・ワンの「デッド・サイレンス」とタイカ・ワイティティの「ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル」。

「デッド・サイレンス」は、なんで今まで未見だったのかと我が身を疑うような傑作で、「ソウ」から「インシディアス」、そして「死霊館」へと変遷を遂げる過程でのワンのフィルモグラフィーとして欠かすことができないであろう一本。この先のあらゆる片鱗が見える傑作。
「ハント〜」は、所詮ワイティティでしょ?と舐めると痛い目を見る佳作で、少年目線の冒険譚が話が進むにつれてスケールが大きくなっていく展開がお見事。後の傑作「ジョジョ・ラビット」へ繋がる要素も多し。「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」や「ソー:ラグナロク」よりも遥かに面白いのは間違いない。


8月に鑑賞したドラマは「アンブレラ・アカデミー」シーズン2。相変わらず話の展開が強引なのだがキャラクターが魅力なので許せてしまう。特に、シーズン1からずっと言っているが5号ことエイダン・ギャラガー君の成長にはこれからも期待したい。

リース・ウェザースプーンとケリー・ワシントン主演のリミテッドシリーズ「リトル・ファイアー」は、前半はなんてことないメロドラマで、「ビッグ・リトル・ライズ」にも似てるな〜なんて思っていたが、それよりも更に範囲は狭く、2家族間の人間にだけスポットを当てたドラマで、子供も含めてドロドロに乱れて交錯する展開が面白かった。残念ながら先日亡くなったリン・シェルトン監督の遺作となってしまった今作だが、彼女がエミー賞で監督賞にノミネートされた最終話は凄まじいパワー(というか怒鳴り合い)が炸裂していた。

そんな中でも特に優れていたのは、Netflixのリミテッドシリーズ「アンビリーバブル」。

トニ・コレット、メリット・ウェバー、ケイトリン・ディーヴァーの役者陣の演技、演出、脚本すべてが最高峰。リミテッドながらこのクオリティを保ち続けたエピソードと、アメリカの闇を突きつけるテーマ性といい、とんでもないドラマを観てしまったという感想。内容が内容だけに気軽に勧められるドラマではないが、近年稀に見る傑作としてぜひ一人でも多くの人に観てほしいと思うシリーズだった。