2021年 ドラマベスト10
毎年恒例の今年のドラマランキング個人ベスト10について。
10位「メア・オブ・イーストタウン」(HBO)
ケイト・ウィンスレット主演の骨太ミステリー。小さな田舎町を舞台にした狭いコミュニティ内で顔見知りであるが故の疑心暗鬼となる人間ドラマの重厚さが流石HBO。ウィンスレットは言わずもがな、今年のエミー賞で無名ながら助演女優賞を受賞したジュリアンヌ・ニコルソンはじめ、住民役の役者陣がほぼ全員ハイレベルな演技をしているのも見どころだった。
9位「フィール・グッド」 シーズン2(Netflix)
コメディアンのメイ・マーティンの実体験を自らドラマ化した今作。シーズン1も素晴らしかったが、今シーズンでは主人公メイのトラウマへの向き合い方、心の機微を丁寧に(時に馬鹿馬鹿しくも)描いていてとても良かった。
8位「ザ・チェア」(Netflix)
サンドラ・オー主演、女優のアマンダ・ピートがショーランナーを務め、旦那のデヴィッド・ベニオフとD.B.ワイスのGoTコンビがプロデュースの「大学の教授陣の政権争いを描いたコメディ」と聞いて、まったく想像がつかなかったが、大学学部長を中間管理職として描きその悲喜こもごもを哀愁たっぷりに描いた作品として今年一ウェルメイドで期待を超えた面白さだった。サンドラ・オーの演技の巧みさも再認識。
7位「マスター・オブ・ゼロ」シーズン3(Netflix)
待望のシーズン3ながら、主演兼ショーランナーだったアジズ・アンサリはバックに回り、リナ・ウェイスとナオミ・アッキーを主役としたカップルのドラマを描いた今作。「Moment In Love」というサブタイトルが付くように、恋人同士だった2人が徐々にすれ違うまでの顛末、人生の楽しかった瞬間を切り取った丁寧なドラマに胸が締め付けられた。これまでにあったようなコメディの部分が無いため評価は分かれたものの、こうしたミニマムな人間関係こそが今作の魅力であり、「Master Of None」というタイトルが表すように「器用貧乏な」人間ドラマではないかと思う。
6位「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ)
日本のドラマは殆ど観ないのだが、今作に関しては久々に「ハマった」という1本。決して大きな事件が起きることは無いのだが、松たか子演じる大豆だとわ子と周囲の人間ドラマ、コメディとサプライズの絶妙なバランスと、エンディングに至るまでの作り込みに毎週楽しみになってしまったドラマ。同じ脚本家の坂本裕二の過去作「最高の離婚」や「カルテット」も追いかけて観てすっかりドハマりしてしまいました。
とあるゲーム開発会社を舞台にしたオフィスコメディとしてシーズン1はそこそこに楽しめたかなという印象だったが、シーズン2はギャグのキレが格段に上がりめちゃくちゃ笑えるとともに、前季で登場したキャラクターたちが際立ち一人一人のドラマが描けている点ですごく面白かった。シーズン1から2になる点で明暗が分かれるのはこのドラマをきちんと描けるかどうかではないかと今更ながら思う。昨年ベスト10に入れるぐらい面白かったのにシーズン2がまるで駄目だった「テッド・ラッソ」、「私の”初めて”日記」に共通して言えるのはこのキャラのドラマ、成長を描けていなかった点にあると思う。
4位「メイドの手帖」(Netflix)
「夫のDVから逃げるために娘を連れて家出した主人公がメイドになってお金を稼ぐ話」と聞いてあまりの重いテーマに観る気がなかなか起きなかったし、実際に重い物語と展開で気が滅入ることもあったのも事実。だが、それ以上に主演のマギー・ケアリーの憂い顔をしつつも気丈に振る舞う演技が(コメディ要素込みで)素晴らしく、かつハイテンポな演出で”ドラマ”というエンターテイメントにうまく落とし込んだ面白さがあった。後から監督・製作が「ER」「シェイムレス」のジョン・ウェルズだと知り、驚きつつも納得した。
3位「ホワイト・ロータス」(HBO)
ハワイのリゾートホテルを舞台にした宿泊客と従業員とのゴタゴタを描いたまさに”グランドホテル”形式のコメディドラマ。ブラックな笑いとぞれぞれの衝突が張り詰めていく中で、カットインで映し出されるハワイの絶景が素晴らしく、こんな大自然の中でもこんなにも醜くくて小さい諍いが起きるという皮肉さが良い。全話の脚本・監督を務めたマイク・ホワイトの手腕と、終始ヘコヘコと奇妙に鳴り続けて耳に残るテーマ曲、そして誰しも印象に残るであろうジェニファー・クーリッジの暴走演技で、唯一無二の世界観を作り上げた、楽しくも今年一クレイジーな1本。
2位「地獄が呼んでいる」(Netflix)
ある日突然地獄から来た使者が特定の人間を焼き殺す事件が発生し・・・という物語から驚きのツイストを加えた救いのない展開ながら、アクションの楽しさも兼ね備え、個人的には「イカゲーム」よりも遥かに面白く見どころがある韓国ドラマだった。「新感染」のヨン・サンホの作家性というのがイマイチ掴めていなかったが、人間の汚さという部分を煮詰めてエンタメに昇華する巧みさというのが今回で証明されたように思う。
1位「セックス・エデュケーション」シーズン3(Netflix)
シーズン1、2も観続けて好きなドラマではあったが、まさかここまで化けるとは・・・こんなにも泣かされるかと驚かされた意味でもダントツで今年一位のドラマ。性教育がテーマだけに前季まではイロモノ的なコメディ要素がメインだったが(それがこのドラマの魅力でもあったが)、今シーズンでは2年かけて描いたキャラクターたちをミックスし、一人一人をさらに深堀りしてこんな一面があったのか!と何度も笑いながら涙ぐんでしまった。
<次点>
「モーニング・ショー」シーズン2(Apple TV+)
ギョッとするエピソードもあり基本楽しめたが、いち早くコロナをテーマに取り入れつつも少し時期尚早で粗が目立ったのが残念。
「マーダーズ・イン・ビルディング」(Star/ディズニープラス)
スティーヴ・マーティンとマーティン・ショートの懐かしい2人とセレーナ・ゴメスが織りなす古き良きミステリーという趣で、今年サプライズヒットとなった1本。ミステリーとして十分楽しめたものの、少しエンジンがかかるのが遅かった点と、やはりギャグがちょっと古かった・・・
<見逃し旧作ベスト5>
今年のドラマではないものの、見逃して面白かった5本もここで供養させていただきたい。
「バリー」 シーズン2(HBO)
第5話「ronny/illy」が最高!
「ザ・クラウン」シーズン3(Netflix)
シリーズ最高傑作。
「ピュア」(BBC)
何故UKドラマはこんなにも繊細で泣けるのか。
「Pバレー」(Starz)
ストリッパー版「オレンジ・イズ・ザ・ニューブラック」。
「僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE」(HBO/Sky Atlantic)
ジャック・ディラン・グレイザー君の虜です。