悪魔の吐きだめ

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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」ラストの曲に込められた意味

MARVELの中でも特に原作の知名度が低かったにも関わらず、大ヒットとなった「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」待望の続編、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」が日本で公開となった。

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この無名に近いキャラクター達の作品がヒットした理由には、キャラクターや話の面白さもあるが、特に従来のアメコミ映画らしからぬ選曲にある。主人公が母親から貰ったミックステープをウォークマンで愛聴している設定ということもあり、宇宙での激しい銃撃戦の最中に70年代〜80年代のヒット曲が流れるというミスマッチ感が面白く、ドラマを一層盛り上げている。
 
今回の続編でも、1作目同様に様々な曲が使用されていた。ここでこの曲か!みたいな驚きもありながら、フリートウッド・マックの「The Chain」や、ルッキング・グラスの「Brandy」などは、重要な場面で繰り返し使用され、とても印象的だった。
そんな曲の中でも、特に歌詞の内容とリンクさせて使用されていたラストの曲について書きます。
 
以下、ネタバレありです。

 

 
ラスト、ピーターを守るために犠牲となったヨンドゥ。その彼がピーターにプレゼントした音楽プレイヤーから流れるのが、キャット・スティーヴンスの「Father and Son(父と子)」だ。
 
 
この曲は1970年に発表されたキャット・スティーヴンスのアルバム「Tea for the Tillerman」に収録された、父と息子の擦れ違いについて書かれた曲である。
父から息子への言葉が低音で、息子から父に対する思いが高音で歌われており、若さ故に夢を追って突っ走ってしまう息子を諭す父親、それに対して反撥する息子のようすが描かれた歌詞となっている。
 
この曲をプレイヤーからピーターが自ら選んだのか、プレイリストの一曲目に入れられていたのかは分からない。ただこの曲は、ヨンドゥから息子のピーターに対してのメッセージだったのではないだろうか。
映画では一部のみ歌詞の字幕が出ていたが、全文は下記のようになっている。(筆者意訳)
 
Father and Son(父と子)
(父)
今は変わるときじゃない、落ち着きなさい
お前はまだ若い、でもそれは仇になるし、
まだ沢山知らなきゃいけないことがあるんだ
女の子を見つけて、結婚したければすればいい
俺を見ろ、歳はとったが幸せだ
俺もお前みたいな頃があったから、落ち着いていられない気持ちも分かる
でも時間をかけてよく考えるんだ
明日はあるけど、その時には夢はもう消えているかもしれない

(息子)
何度言ったら分かるんだ
いつも昔話ばかりを聞かせて、俺が話し始めても聞いてくれりゃしない
もう行くよ、俺は行かなくちゃいけないんだ

(父)
今は変わるときじゃない、ただ座ってゆっくりしていろ
お前はまだ若い、でもそれは仇になるし、
まだ沢山知らなきゃいけないことがあるんだ
女の子を見つけて、結婚したければすればいい
俺を見ろ、歳はとったが幸せだ

(息子)
俺は泣いてる間も、ずっと思いを胸の中に閉まっていたんだ
でもそんなことは耐えられない
みんながそうだとしても、俺は違う
今は行かないと、行かなくちゃいけないんだ…
 
ピーターの本当の父親だったエゴの手から守ってきたヨンドゥ。しかし、それを知らずに彼を煙たがり逃げてきたピーター。歌詞の中の「夢を追う息子」は、父親を探すピーターの姿に通じる。ヨンドゥはそんな彼を「逃げたら食っちまうぞ」と脅し、止めてきた。しかし、ピーターはヨンドゥの元を出て行った。
 
しかし、自分を育て、守ってきたヨンドゥこそが、本当の父親だったと彼は最後に気づく。
ヨンドゥが「これまでマトモなことは何もして来れなかった。最後に男にさせてくれ。」と言う場面があるが、「父として」の言葉は、ヨンドゥはこの曲に託したのではないだろうか。
 
ヨンドゥの遺体を前にしたピーターが漏らした一言「大事な人は身近にいて気がつかないんだな」という言葉が、この曲の歌詞と重なることで、より一層泣けてくる。
この曲から、彼は「父の思い」を知り、前に進んだのだ。