2021年 映画ベスト10
毎年恒例の今年観た(公開・配信された)映画ベスト10について。
クリステン・ウィグとアニー・マモロウの「ブライズメイズ」コンビの新作ということで期待していたが、前作と打って変わって完全にバカバカしいコメディに振り切った快作(怪作)。中年期の女性の悲哀を混ぜたコメディになるかと思いきや、ツッコミ不在のまま突き進む異様さと底抜けにハッピーな展開にある意味感動。
第9位「ザ・スーサイド・スクワッド」
ディズニーに一時切られたジェームズ・ガンがワーナーと手を組んで、お金かけて好き放題やりまくった大作。今の時代にこんなビッグバジェットなB級映画(褒めてる)が作られることに心底驚いた。とはいえ後半からは陰に生きる人々をフィーチャーした展開はこれまでのガンの作品にも共通する至って真面目な映画でもあったなと思う。
第8位「ドント・ルック・アップ」
超豪華俳優陣を揃えて今のコロナ禍とメディアと政治を全てひっくるめたブラックコメディとしてゲラゲラ笑いながらも、あまりに現実と地続きな話にギョッとする。すっかり最近は政治映画専門となったアダム・マッケイだが、近年の作品の中でも特に面白かった。
第7位「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」
007への思い入れはそこまで無いのだが、ダニエル・クレイグのボンドの最終作としてもアクションとしても楽しめた一本。やはり何より白眉は、アナ・デ・アルマスとクレイグのアクションシーケンスで、この軽快さとユーモアは間違いなく脚本に参加したフィービー・ウォーラー=ブリッジの功績だと思うし、全編でこのノリが続いて欲しかったという気持ちもある。
第6位「スポンティニアス」
「ティーンエイジャーの身体が爆発する奇病が発生する死と隣り合わせの中で出会った男女の物語」というあらすじだけでは全く訳が分からないのだが、そんな変わった設定ながら中身はめちゃくちゃピュアな学園ラブコメ映画という佳作。チャーリー・プラマーとキャサリン・ラングフォードの演技もさることながら、10代の刹那な日常の切り取り方が秀逸だった。
第5位「パワー・オブ・ザ・ドッグ」
広大な荒野を舞台に、高圧的な牧場主とそれを取り巻く人々の関係性がヒリヒリと描かれるのだが、何よりもベネディクト・カンバーバッチとコディ・スミット=マクフィーの演技の素晴らしさ尽きる。カンバーバッチ演じるフィルというキャラクターとマクフィー演じるピーターのパワーバランスが一気に逆転する場面は鳥肌モノ。単に“トキシック・マスキュリニティの解体”という言葉で片付けてはいけない、美しくもアブない雰囲気を纏った秀作。
第4位「ミッチェル家とマシンの反乱」
映像が凄い、アクションが凄い、という以上に久々に超面白いコメディ映画だった。もちろん「スパイダーバース」の制作陣故に映像の情報量も途轍もないのだが、全編に渡るギャグの嵐と家族愛をテーマにめちゃくちゃ綺麗に収めてる点でも本当に凄い作品。
第3位「花束みたいな恋をした」
恐らく観る人によっても思い入れや評価が変わる「あの時」を追体験できる胃痛恋愛映画。どの場面を切り取っても男女双方の視点で語ることができる点においても凄い作品で、今さらながら脚本家 坂元裕二のスゴさを知った一本。
別記事に感想を書いてるのでそちらも。
トーキング・ヘッズは数曲知っている程度で、世代でも大ファンでもないのだが、まさかここまでハマるとは思ってなかった。デヴィッド・バーンの歌唱力と、楽器隊の生演奏の迫力、ヘンテコで癖になるダンスが組み合わさった時の高揚感がハンパない。特に「This Must Be The Place」の“Ooh〜”のくだりで行進するところが最高に好きです。
第1位「マリグナント」
ホラー作品の監督から暫く離れ、すっかり大作映画監督のイメージとなりつつあるジェームズ・ワン。「死霊館3」の監督からも退いた裏で進めていた完全オリジナルの新作ホラーに期待していたが、まさかこんなトンデモ映画だったとはという驚き。そして、無茶苦茶な話ながら、これまで培った演出力で、ジャンプスケアに頼らない流麗なカメラワークやトンチキアングルのビジュアルの洪水で眼福&大満足。この暗い世の中でも、こんなぶっ飛んでとにかく楽しい映画からパワーをもらえたのが嬉しくて敢えて今年のベストとしました。
〈次点〉
「ファーザー」
親子のドラマかと思いきや、アルツハイマー患者の視点に立ったホラーでびっくりした。
「ビーチ・バム」
ユルいマシュー・マコノヒーのメロウなロードムービーとして面白かった。
「ズーム/見えない参加者」
「アンフレンデッド」と同じ系統かと思って嘗めてたら、あらゆるアイデアが凝縮されていて感動。世のZOOM系コンテンツはこれを見倣ってほしい。
〈見逃し旧作ベスト5〉
「スリー・フロム・ヘル」
デビルズ・リジェクツが哀愁たっぷりに帰ってきただけで泣いた。
「恐怖のセンセイ」
新時代のファイトクラブ。
「わたしたち」
小学生時代を追体験して号泣。
「ザ・ライダー」
意外にもサスペンスとして一級の面白さ。
「ソウルフル・ワールド」
物語、映像、音楽どこを取っても超一級。