6月に観たもの・読んだもの
ちょっと遅くなったけど6月に観たもの、読んだものについて。
まず個人的に6月はイベント的なトピックがいくつかあって、一つはサザンのライブだった。奇跡的に40周年ライブツアーの最終日のチケットが取れて、それも久々のライブだったから楽しみで、行ってやっぱり楽しかった。何より今回のセトリが素晴らしくて、40周年ということもありヒット曲で固めてくるかと思いきやかなりコアな選曲度肝をぬかれた。序盤でいきなり「希望の轍」を持ってきて観客を驚かせての、中盤の「女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)」や「HAIR」にかけてのドーム全体に漂う異様さ、歪さたるやそれはそれは凄まじい雰囲気で、そして同時にそれが無茶苦茶カッコよかったのだった。40年経ってもこうやって観客を挑発し続ける桑田佳祐はさすがだなぁと感心する。
世に万葉の花が咲くなり(リマスタリング盤) Original recording
- アーティスト: サザンオールスターズ
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2008/12/03
- メディア: CD
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もう一つのイベントはラース・フォン・トリアーの新作が公開されたこと。「ハウス・ジャック・ビルト」である。
「ハウス・ジャック・ビルト」、最っ高。とにかくモラルガン無視でコメディからサスペンスまでジャンルを横断しながら突き進み、主人公ジャックとトリアー自らを重ね合わせて過去を反省するのかと思いきや、開き直って自らをさらに地獄の底に突き落とした。ラストの選曲まで素晴らしすぎて笑った。 pic.twitter.com/zE9p4ptNtz
— デロ太郎 (@Delorean88) 2019年6月14日
桑田佳祐と同じくベテランとなったいまでも観客を挑発するのはトリアーも同様で、特に新作では“コメディ”の方向に抜群にトンがってて最高。それだけでなく、サスペンスからホラーまでジャンルを横断して展開する様に、この人マトモに撮ればもっと見直されるのになぁと思いつつも、マトモじゃないからトリアーの映画は面白いからなと自己解決してしまった。
また、ドラマについてはライアン・マーフィーづくしの1ヶ月で、「アメリカン・ホラー・ストーリー シーズン8 Apocalypse(邦題:黙示録)」、「アメリカン・クライム・ストーリー: ヴェルサーチ事件」、「POSE」を観ていた。
アメホラはやっぱり初期の頃に比べてもツイストが弱くて正直ダレる話が多かったのだが、一番アガッたのがシーズン1の舞台である“マーダーハウス”が再登場、そしてジェシカ・ラングが再登板した回だった。ラングはアメホラのレギュラーから離れて4年以上になるがそのブランクを感じさせない風格だった。毎回同じキャストがシーズン毎に別の役を演じるアメホラだが、初期シーズンは座長として(シーズン4ではまさにサーカスの座長役だったが)ラングはドラマを牽引していた。もちろん初期から変わらずに続投しているサラ・ポールソンの演技力も高いのだが、可憐な見た目のせいか被害者の役が多くて、ラングのようなドスを利かせた役柄はいまだできない状況である。そんなアメホラも次回はサブタイトルを「1984」と銘打って、流行りの80s懐古主義に便乗する。出遅れ感も否めないがアメホラらしさを取り入れて他とどう差をつけるかが楽しみだ。
「ヴェルサーチ」は、97年に起きたジャンニ・ヴェルサーチ殺害事件を基にしたドラマで、アメクラ(アメホラと似ていてややこしい)シーズン1ではOJシンプソン事件を扱っていたが未見だった。特に前季との繋がりもないのでこっちから観始めたのだが犯罪実録モノとしてすごく面白かった。全9話あってこの事件だけでそんなに話を持たせられるのかと疑問だったが、アメホラと比較してもダレることなく一定の緊張感を保っていた。特に今回俳優のマット・ボマーの監督回の第8話の演出が秀逸で、子供の後ろで親が暴力を振るわれているのを敢えてピントを外して子供目線として描くなど、捻った演出に素直に驚いてしまった。
実は先に述べた「アメホラ8」のs1回帰回もサラ・ポールソン監督回で、初期メンと自らの出世作となったドラマへの深い愛情をもったエピソードで、入れ替わり立ち替わり現れるキャストの見せ方も優れていた。ライアン・マーフィーはTV界のジャド・アパトウになりつつあるのかもしれない。
ちなみに「アメホラ」、「アメクラ」、「POSE」は同じマーフィー作品ながら三者三様で、「POSE」は中でも苦手な類のマーフィー作品で二話目あたりで挫折してしまった。
今月読んだ本は、「漱石全集を買った日」という本で京都の古本屋店主とその客との対談形式になっているもの。古本の魅力について、あれがいいよね、ここがいいよねと語り合う様子がすごく面白くて、読み終えた頃には完全に影響されてしまってその後休日に古本屋を巡ったりした。
店主の山本さんが関西弁でガツガツ話す一方で、お客側の清水さんの冷静な語り口が対照的で、2人の会話だけでも楽しめる。驚くのは2人の読書量というか記憶力で、本の名前を出せば、あの一節がね、と話が即座に出てくるところで、こんな風に本について語れるってなんだか羨ましくなった。