悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2018年 映画ベスト10

今年面白かった映画上位10本について。

去年の作品やDVDスルーの作品は除いてます。

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第10位「RAW」

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大学デビューと同時に肉食デビューしたベジタリアン女子が真面目だった殻を破るようにノリノリで人肉に目覚めていく様が最高。一見するとフェティシズム溢れるトンデモ映画に見えて、実は自身と(その鏡となる姉と)どう向きあうか、を丁寧に描いた至極真っ当な成長物語でもあった。

 


第9位「レディ・バード

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グレタ・ガーウィグの初監督作は、誰もが経験する痛い10代の思い出と母親との葛藤の物語。普通ならしっとりとなりそうな青春映画だが、今作は俯瞰的に、時に冷たくバサバサと物語が進んでいくあたりが新鮮。親子ゲンカが次のシーンでは仲良くなっていたりするあたりは、本当に過去の思い出をスライドショーのごとく見させられているよう。次回作にも期待したい。

 


第8位「アベンジャーズ / インフィニティ・ウォー」

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正直なところマーベル映画は特にファンというわけでもなく、だらだらと今まで観続けて(続いて)きたわけだが、今作は今までの中でもずば抜けてアクションが凄い、というかめちゃくちゃ見やすい。これだけのキャラクターを総動員しながらカメラと個々のキャラクターの位置関係、編集が優れているため、大きなスケールでのバトルを描きながらの個々のアクションがすごく丁寧。その辺りはMCUの中でも監督のルッソ兄弟はやっぱり断トツに上手い。加えて群像劇としての描き方も優れている。(この辺はルッソ兄弟出世作「ブル~ス一家は大暴走」と「Community」から培ったんだと思う)ラストもこれだけ各キャラのファンの多いマーベル映画を、ここで終わらせるか!というドSっぷりも媚を売っていなくて最高。あまりにもラストが清々しいし、個人的にはもう後篇は無くても十分だ。

 


第7位「ファントム・スレッド

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自身も完璧主義で自分で何でもこなすポール・トーマス・アンダーソンが病に倒れた時に妻が楽しそうに看病してる姿を見て、今作を思いついたみたいだけど、そりゃ奥さんがSNL卒業メンバーの天才コメディエンヌ、マヤ・ルドルフだもの。こんなきっかけで生まれた今作はやはりコメディ映画だ。常にマウントを取り合う夫婦の愛と狂気。それがなおさら身近にありそうだから可笑しくもあり恐ろしい。

 


第6位「フロリダ・プロジェクト」

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夢の世界の裏側で繰り広げられる日常が子供目線で描かれるファンタジー映画。人々にとっての“ディズニーランド”という存在、その脇に建つモーテルという“現実”。夢と現実の狭間にいる子供が初めて厳しい現実に直面した時、更にその先の“夢の世界”に飛び込む(逃避する)瞬間に涙が止まらなかった。

 


第5位「A GHOST STORY」

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ルーニー・マーラが黙々とパイを食べ続けるあたりで、やっぱりこういう映画か。と思ったのも束の間、その後は湿っぽさは皆無、むしろ驚きのSF展開を迎えアクロバティックに着地。テンポよく進む時代(と展開)に取り残されるお化けを演じるケイシー・アフレックは常にシーツを被っているのだが、その姿だけで哀愁漂う表情がまるで分かるのが凄い。

 


第4位「犬ヶ島

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ウェス・アンダーソン監督の新作は、単なるオモシロニッポン描写じゃなくて完全にファンタジーの世界として確立してるから日本人から見ても違和感が無いし、緻密に作り込まれたいつもの「箱庭的」なウェス・アンダーソンの世界として凄く面白くて楽しい。何より“I Bite”からの“I Won’t Hurt You”に変わる過程が泣ける。今作の日本描写ぐらい「フィクションです!」って言い切ってくれれば、いちいち文句も出ないんだろうなと思うし、でもその中で出てくる日本語表記や台詞がマトモだったのは、脚本にも携わった野村訓市がかなり努力したんじゃないかとも思ったり。

 


第3位「アンダー・ザ・シルバーレイク

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マルホランド・ドライブ、ネオンデーモンに次ぐ“どうかしている”系LA観光映画であり、サブカル要素を散りばめたインヒアレント・ヴァイス。映画に記号を見出したがる僕ら世代にぶっ刺さる中二キャラ全開のアンドリューがso cute。LAの、更にはアメリカのサブカルミレニアム世代に対する“憧れ”をすごい感じたし、あの生活感は真似したくなる。リンチ的な「訳分からなくて楽しい!」ってテンションでもなく、インヒアレント・ヴァイス的なメロウとも違う、なんと言うか変なカクテルをチャンポンして飲んで悪酔いして気怠い感じ。決して嫌な意味ではなく。

 


第2位「タリーと私の秘密の時間

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ジェイソン・ライトマン×ディアブロ・コディ×シャーリーズ・セロンの「ヤング≒アダルト」以来の再タッグ作だけあって楽しみにしてたけど本当に良かった。現実と向き合えない「ヤング~」の主人公のその後の物語とも捉えられる。育児に追われた主婦が見る泡沫の夢。“こうじゃなかったのに”の物語は時に笑えて厳しすぎるほど残酷だけど、「ヤング≒アダルト」と同じく現実に向き合う(向き合わざるを得ない)瞬間には思わず鳥肌が立った。他にも育児に追われて疲弊していく様子をルーファス・ウェインライトの曲に乗せて細かいカットで繋いでいくシーンは今年観た中でも一番のカット。「マイレージ・マイライフ」の搭乗口カットのアップデート版とも思えるし、演出の面でもジェイソン・ライトマンも明らかに前作より腕を上げてる。

 


第1位「聖なる鹿殺し」

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やっぱ俺は良く出来た映画よりこういうトチ狂った映画の方が断然好きだ!理解しようとする事すら無意味に思えてくる状況に身を任せて振り回される快感。1人もマトモな人間がいない世界で繰り出されるギャグの応酬とスパゲッティが胃もたれするぐらい強烈すぎる。登場人物は状況を説明する駒でしかなく、彼らは必死にその置かれた状況、ルールに順応しようとする。そういう意味ではヨルゴス・ランティモスの作家性は、ラース・フォン・トリアーのそれとすごく似てる。映画という枠組みの中でストイックなまでに自分に試練を課してひたすらその中で苦しむマゾヒズムな主人公が大好きなので。