5月に観たもの・読んだもの
4月に「アベンジャーズ」、5月に「ゲーム・オブ・スローンズ」というゼロ年代を代表する二大エンターテイメント作品が終わり、まさに盆と正月が一緒に来たってこのことだなと思った。GoTの感想についての記事は以下に書いた。
ただ、終えて今思うのは、あまり「ゲーム・オブ・スローンズ」ロスというのも起きていないような気がするし、思えば今作はシーズン6あたりで既にピークを迎えていたようにも感じる。とはいえ最後のお祭りにリアルタイムで参加できたし、頑張って追いついておいて良かった。
また、今月はNetflixの新しい「一話15分枠」コメディドラマシリーズ2作品が特に面白かった。これまでのコメディドラマといえば30分枠が一般的であったから新鮮だったし、何より15分という短さながらきっちり起承転結がある点も凄い。一つ目は、SM嬢のバイトをする大学院生とそれを手伝う友人のゲイの青年を描いた「ボンディング」。設定からしてイロモノ系かと思いきや、主人公2人の経緯やら、それが若者特有の居場所のなさだったり、他人の性癖で自らの弱点を克服するきっかけになったりと落とし所が見事。
もう一つは「ブルックで、ブルーノと!」。その名の通りニューヨークのブルックリンで愛犬ブルーノ(パグとビーグルの合いの子のパグル)と暮らす半ニートみたいな主人公の日常を描いたコメディで、Twitterにも書いたが最初はなんとなく観始めたらこれがすごい面白かった。
Netflixオリジナルシリーズの「ブルックリンで、ブルーノと!」(It’s Bruno!)、何気なく観始めたけどコレ「マスター・オブ・ゼロ」、「アトランタ」の流れを汲む新しい“ミレニアル系コメディ”じゃないか!ってわけで日常をシュールに描いたコメディとしてめちゃくちゃ面白いです。 pic.twitter.com/w0y7wgDGD9
— デロ太郎 (@Delorean88) 2019年5月31日
主演・監督・脚本・ショーランナーを務めるのはソルヴァン“スリック”ナイーム。この辺も“ミレニアム世代コメディ”のアジズ・アンサリ、ドナルド・グローバーとも同じだ。ソルヴァンについては初めて聞く名前だったが、バズ・ラーマンの「ゲット・ダウン」のセカンドディレクターやFXの「スノーフォール」のエピソード監督を務めていたらしい。どことなく彼の雰囲気や声がアダム・ドライバーに似ていて、ニューヨークという場所柄もあってか観ている間は「GIRLS」を思い出すことも何度かあった。とはいえ「ブルーノ」はスラップスティック系のコメディだし、ソルヴァン演じるキャラクターの自己中(というより犬中だが)っぷりはアダムというよりハンナのようである。そんなのありえないだろ!っていう展開の中にもさらっと移民問題を入れてくるところもなかなかやり手。日常の中のシュールな出来事を切り取る、アジズ、ドナルドに続く新生“ミレニアム・クリエイター”として今後に期待したい。
今月Amazonから配信された「フリーバッグ」のシーズン2も凄かった。いや、凄すぎた。尖った笑いももちろんだが、カメラに向かって視聴者に投げかける目線は、いつしか共犯者感覚となりギョッとしてしまう。今作については別の機会でいつか書きたいと思う。
今月読んだ本は、ウィリー・ヴローティン著「荒野にて」。
もちろんアンドリュー・ヘイ監督作の原作である。映画の感想は以下。
サブキャラクターの設定や性別に多少の違いはあれど、物語の展開はほとんど映画と同じなので驚いた。また、主人公の15歳の少年チャーリーは原作ではキャラクター性があまり無い。無いというか「器」のような描かれ方をしていて、あらゆる状況、酸いも甘いも全てを吸収してしまう無垢な存在だということが強く描かれている。映画を観ている時にも思い出したが、この辺がアンドレ・アーノルド監督の「アメリカン・ハニー」ともすごく近い。
と思っていたら、アンドリュー・ヘイのインタビューで今作について言及されていた。
『荒野にて』アンドリュー・ヘイ監督が語る、悪しきアメリカの自己責任論 - i-D
ヘイもアーノルドもイギリス人で、確かに外側から見た「アメリカ」のもつアメリカ故の残酷さ、粗雑さの面が描かれていたと思う。それでいえばラース・フォン・トリアーの「ドッグヴィル」の最後にデヴィッド・ボウイの「Young Americans」が使われていたし、選曲の妙といい心底ゾッとしたのを思い出した。
「アメリカ」繋がりでいうと月末に観た映画で「アメリカン・アニマルズ」があった。
「アメリカン・アニマルズ」、虚構と現実が入り交じる青春犯罪モノとして「アメリカを荒らす者たち(American Vandal)」とその構図含めてとても似ている。その裏にある若者特有の焦りとその末のビターなラストが印象的だった。
— デロ太郎 (@Delorean88) 2019年5月27日
やっぱり、タイトルに「アメリカ」が付く作品は、どれも皮肉的というか、“彼を(俺を)こうさせたのは社会(アメリカ)がいけない”というような形容詞的な使われ方をしている。それをずるいと思う反面、やっぱり「アメリカ」って「アメリカ」なんだなぁと日本人ながら思ってしまうのだった。