サプライズの連続!第71回エミー賞を終えて
今年のエミー賞はサプライズの連続だった。
まず、一つめのサプライズにして一番の驚きだったのはジュリア・ルイス=ドレイファスがコメディ部門主演女優賞を逃したことだ。6年連続同役で受賞を果たしていたドレイファスはファイナルシーズンである今年も間違いなく受賞するものと誰もが予想していた。
コメディ部門の助演女優賞と助演男優賞は、「マーベラス・ミセス・メイゼル」からそれぞれアレックス・ボーステイン、トニー・シャルーブが受賞。主演男優賞は「バリー」からビル・ヘイダーが受賞した。と、ここまでは何となく予想がついていたが、監督賞、脚本賞が続けて「フリーバッグ」が受賞したのだ。おやおやと思っていると、そのまま主演女優賞はなんと「フリーバッグ」のフィービー・ウォーラー=ブリッジが受賞したのだ!個人的にもブリッジが受賞したらいいなとは思っていたが、女王ドレイファスには到底勝てないと思い込んでいた。しかし、エミー会員はドレイファスに最後のトロフィーは渡さずに、新鋭ブリッジを選んだのだ。この英断を個人的には高く評価したい。
そして続くコメディ部門作品賞。ここで主演女優賞を逃した代わりに「Veep」が来るか、2年連続「マーベラス・ミセス・メイゼル」か、はたまた昨年受賞を逃した「バリー」か。と、どの作品にも同じレベルの受賞の可能性がある中でなんと作品賞は「フリーバッグ」だったのだ。完全にブリッジの年となったエミーだった。
"This is just getting ridiculous." Phoebe Waller-Bridge recalls the "absolutely mental" journey of #Fleabag in her acceptance speech for best comedy series https://t.co/WmT1Fmyol4 #Emmys pic.twitter.com/g7d7HYBrAF
— Hollywood Reporter (@THR) 2019年9月23日
ドラマ部門も波乱の受賞だった。ここも助演部門は、男優賞が4度目の受賞となったピーター・ディンクレイジ、女優賞がジュリア・ガーナーと下馬評通りの展開。主演男優賞はビリー・ポーターが受賞し、ゲイを公表した俳優として初めての受賞となった。そして驚きが主演女優賞だった。こちらも“初めて”アジア人として受賞を望まれていたサンドラ・オーのほか、ロビン・ライト、ローラ・リニー、ヴィオラ・デイヴィス、そしてエミリア・クラークという、クラーク以外にも全員が“マッド・クイーン”状態のノミニーの中で受賞は「キリング・イヴ」のジョディ・コマーだったのだ。同ドラマで2人ノミニーではオーに軍配が上がると思っていた。また、この「キリング・イヴ」、クリエイターの一人はフィービー・ウォーラー=ブリッジなのだからすごい。
Everything is love. Co-stars @IamSandraOh and @JodieComer were both nominated for Lead Actress In A Drama Series for @KillingEve. pic.twitter.com/oC192cgPoO
— Television Academy (@TelevisionAcad) 2019年9月23日
ドラマ部門の脚本賞は、「ベター・コール・ソウル」、「ゲーム・オブ・スローンズ」、「ハンドメイズ・テイル」など強豪が揃う中、初ノミニーとなった「サクセッション」のジェシー・アームストロングが受賞。アームストロングはブリッジ同様にイギリス出身のコメディ脚本家で、「Veep」のオリジナル版ドラマ「Thick of It」や「ピープショー」のクリエイターで、アメリカでは初のノミネートでありながら受賞となった。
監督賞は「ゲーム・オブ・スローンズ」から2つのエピソードがノミネートされており、どちらかは受賞するだろうと思いきや、なんと「オザーク」からジェイソン・ベイトマンが受賞してしまった。作品賞、主演男優賞もノミネートされていた「オザーク」は過大評価されている気がしないでもないが、監督賞の受賞はベイトマン本人にとっても予想していなかったようで、その様子を綴った以下のツイートは「ブルース一家は大暴走」を知る人にとってはめちゃくちゃ面白い。
Narrator:
— Joseph Scrimshaw (@JosephScrimshaw) 2019年9月23日
Michael Bluth was not even aware he was nominated.#Emmys pic.twitter.com/TVKRg1Szlb
この流れでドラマ部門の作品賞も、最有力の「ゲーム・オブ・スローンズ」すらも受賞が危ういのではないかと思ったが、あっさりここは誰もが予想した通り「GoT」が受賞する結果となった。オープニングでもネタにされていたスタバのカップ問題といい、何かと批判を浴びてしまった今作だったが、文字通り有終の美を飾ることができ、無事成仏できたのではないかと思う。今シーズンだけが凄かったのではなく、「ゲーム・オブ・スローンズ」というドラマ自体が革新的だったのだから。
リミテッドシリーズは「チェルノブイリ」が作品賞、監督賞、脚本賞を受賞。同じく批評家から絶賛だった対抗馬「ボクらを見る目」は、ジャレル・ジェロームの主演男優賞1部門のみの受賞で終わった。
TVムービー作品賞は、「ブラックミラー/バンダースナッチ」が受賞。プレゼンターのジェームズ・コーデンが「観る人によって話が違うじゃねえか」と紹介していたがその通り。「ブラックミラー」としては「サン・ジュニペロ」、「USSカリスター号」に続いての3度目の受賞となった。クリエイターはチャーリー・ブルッカー。ブリッジ、アームストロングに続いてやはりイギリス勢クリエイターの勢いを感じる受賞式となった。
そんなエミーでダントツの可愛さだったのは「ベリー・イングリッシュ・スキャンダル」よりリミテッド部門助演男優賞を受賞したベン・ウィショー。壇上に登ったウィショーは、頭を抱えながら開口一番に「実は二日酔いなんだ…笑」とポツリ。ウィショーの株がまた上がる結果となったキュートすぎる受賞となった。
This will be handy. Thanks Ben Whishaw 🥂 #Emmys pic.twitter.com/TgH3KStltF
— Access (@accessonline) 2019年9月23日