『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の魅力
いよいよ、9/2にNetflixが日本で開始されるということで、Netflixのオリジナルドラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」について書きたいと思います。
まず、Netflixはアメリカで人気の動画ストリーミングサービスで、過去の映画やテレビドラマのみならず、自社でもオリジナルドラマを製作していることで有名。特にデヴィッド・フィンチャーが製作、ケヴィン・スペイシーが主演した「ハウス・オブ・カード」は、1話に映画並みの予算とクオリティーで、日本でも話題になりました。
そんなNetflixのオリジナルドラマシリーズで、その「ハウス・オブ・カード」以上の人気をアメリカで誇るのが、「オレンジ・イズ・ニューブラック」です。
大まかなストーリーは、婚約者と幸せに暮す主役パイパー・チャップマンが、学生時代の恋人(レズビアン)と共謀して麻薬の密輸を行っていたのが今更になってバレてしまい、突然投獄される。しかも、その元恋人も同じ刑務所にいることが分かり…というのが一話目の内容。女性刑務所で様々な囚人たちと関わりながら、刑期を終えるまで奮闘するパイパーの姿がドラマを通して描かれる。
「Orange is the New Black」というタイトル、「~is the New Black」とは慣用句で、「○○は流行りの色」という意味。訳すと「オレンジ=囚人服が流行りの色」という意味。(主にファッション雑誌などで使われるようで、なんとも皮肉なタイトル)そして、もうひとつの意味は、直訳して「オレンジは新しいクロ」。この意味は下のポスターを見ればわかるように、オレンジ色は新人が着させられる囚人服のため、普段の社会であれば、優遇される白人女性のパイパーが、刑務所内では逆に社会で黒人が受けるような差別を受けることを意味している。
料理長の機嫌を損ねれば食事にタンポンを入れられるし、刑務官に逆らえば独房に入れられる。パイパーの受ける受難は相当なもの。
しかし、このドラマ、あくまでコメディーだから全然重くない。それは、第一話目の冒頭の囚人仲間から嫌がらせを受けるシーンを見れば明らかで、シャワーを浴びているパイパーが、「可愛らしいオッパイしやがって!」、と悪態をつかれるのだが、その時の彼女は、自分のオッパイを誇らしげに思い、恥ずかしそうにニヤリと笑う。
悲惨に思えるシーンでも、なんだか滑稽に見えるのは、このドラマのクリエイター、ジェンジ・コーハンによるもの。彼女は前作「Weeds~ママの秘密」というドラマで、未亡人の主婦が家族を養うために大麻の密売人になる、というブラックコメディーを手掛けていました。同じ薬物ドラマでも「ブレイキング・バッド」とは大違いで、陰惨な雰囲気は皆無。どんなに絶望的な状況でも、明るくやり過ごす主人公のメアリー・ルイーズ・パーカーが印象的なドラマだった。そんな製作者のドラマだからこそ、笑いとドラマのバランスが心地よく、人気に繋がっているのだと思う。
また、この作品のもう一つの魅力は、パイパーを取り巻く囚人たちの物語である。元恋人のアレックスや、刑務所のボス的存在レッド、パイパーを目の敵にするペンサタッキーなど、主人公のパイパーに嫌がらせをする彼女たちを最初は観てる側も憎々しく思うけれど、物語が進むにつれ、彼女たちが入所した理由が徐々に明らかになる。誰しもが刑務所に入りたくて入ったわけではなく、それぞれに罪を犯した理由があり、一人一人にドラマがある。僕は、個々のキャラクターを掘り下げて描ける事こそ、テレビシリーズの最大の魅力だと思っているので、毎話明らかになっていくキャラクターの本性がとても楽しかった。きっと1シーズンを観終わる頃には、誰しもお気に入りのキャラクターが見つかると思う。
そんなキャラクターたちと、敵対し合いながら(時には協力し合いながら)、刑務所という地獄を生き抜いていくサバイバル・コメディー「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」。面白いのでNetflixに加入したらぜひ観てみてください。
2015年エミー賞ノミネートについての雑記
今年もエミー賞のノミネートが発表されました。
そんな中でも今年はコメディ勢、というか「サタデーナイトライブ(以下、SNL)」組が熱い気がするのでそれについて色々。
天才になるために 『セッション』
【若干ネタバレあり】
『セッション』は本当に衝撃的だった。観た後は、周りの人たちが全て凡人に見えるぐらい打ちのめされた。観た人なら分かるかもしれないが凡人を否定するような映画であるからだ。
クリープハイプのライブに行ってきた
祝!Netflix日本上陸!
遂に!遂に!Netflixが日本上陸!というわけで今回は日本で配信してほしいドラマを挙げてみました。
ちなみにNetflixとは、アメリカ人の4000万人以上が登録している最大手の動画ストリーミング配信サイト。そのコンテンツ数はHuluを凌ぐほどで、近年だとデヴィッド・フィンチャー製作の元、オリジナルドラマ「ハウス・オブ・カード」を制作してエミー賞を受賞するなど、今ノリにノッてる配信サービスなんです。
そんなNetflixがいよいよ日本に!こりゃすっかり日本テレビの専門サービスになりつつあるHuluもやばいんじゃないの?なんて話はさておき、ぜひ日本で配信して欲しいドラマを紹介したいと思います。
改めて『ブレイキング・バッド』について語りたい~シーズン1~
ようやく重い腰を上げて「ブレイキング・バッド」について書く事にした。なんで重い腰になるかと言うと、それは言うまでもなく「ブレイキング・バッド」(以下BrBa)こそ海外ドラマ史上最も優れたドラマであり、個人的にも大ファンだからである。
散々Twitter含めて、会う人会う人に「BrBa」をオススメしてた。ようやく昨年にソニーからファイナルシーズンまでDVD化されたけど、数年前にシーズン2までが発売された頃から大ファンで、当時から声を大にして猛烈プッシュしてたものの、それ以降のシーズンは全くソフト化されなくて。。あの時はほんと苦しい思いをしてたなぁ。結局最初に「BrBa」を発売していたDaylighって会社はどうなったんだろうか。。
まあ、そんな話はさておき「BrBa」は本当にすごいドラマだと言うことを長々と書きたいと思います。先に言っておくけど、ネタバレ前提で語っていくので、未見の方はご注意を。
このドラマのシーズン1は、いわば物語の序章である。全ての物語のキッカケ(元凶)が描かれる。
主人公のウォルター・ホワイトは、高校の化学教師。妻と息子を支えるために安月給ながらも懸命に働いていたところ、突然倒れ、運ばれた先の病院で末期ガンを宣告される。そんな彼は家族にお金を残すために元教え子のジェシー・ピンクマンと手を組み、ドラッグ精製を始める。ってのが物語のはじまり。
少しお金を稼ぐために軽い気持ちで始めたドラッグビジネスは、だんだんと思わぬ結果となっていき血を血で洗う闇の世界に徐々にドップリ浸かっていくのだが、まだシーズン1ではその世界の恐ろしさを知ったウォルターの戸惑いが描かれている。
第1話には「ブレイキング・バッド」の面白さが全て詰まっている。師弟関係となるジェシーとの世代ギャップギャグ。妻スカイラーに対して秘密を抱える苦悩。そして化学の力を使って悪人に立ち向かう痛快さである。
脳性麻痺を抱える息子をいじめる不良を蹴り倒し、メスの精製に見せかけて毒ガスを発生させギャングを気絶させ、初の取引で大量に金を稼げたウォルターは、男を取り戻し帰宅後にスカイラーと激しくセックスする。初回からこんなにもブッ飛んでるドラマがあっただろか。しかもこれがコメディとして作られているのが驚きである。加えて、アルバカーキの乾いた荒野と澄み渡る青空の風景を捉えた画作りが、この暴力的な物語とマッチし、なんだかコーエン兄弟の「ファーゴ」の荒野版を見ているようだ。(実際、かなりこの映画には影響を受けているらしく、今シーズン最終話のタイトル「A No-Rough-Stuff-Type Deal」は、「ファーゴ」の台詞から取られている)
今シーズンでパイロットの他に特筆すべきエピソードは、ウォルターが悪に振り切れた第4話「Cancer Man」と第6話「Crazy Handful of Nothin'」である。
第4話「Cancer Man」では、ウォルターはガンを宣告された事を家族に告白する。このシーンは涙無しでは見られないほど役者陣の演技が素晴らしいのだが、このエピでは、もう一人のCancer Manが描かれる。タイトルが意味するのは、ガンを患った男=ウォルターと、社会的にガンのような奴=ケンである。
銀行の列を割り込みし、ハンズフリーで大声で話すケンという男を見かけたウォルターは、不快に思いつつも何も言えなかったが、たまたま入ったガソリンスタンドで彼の姿を見かける。彼が車から離れた隙に彼の愛車のボンネットに濡れたモップを突っ込み、バッテリーをショートさせて車ごと爆発させる。
もうこのシーンがマジで最っ高にカッコイイんだよね。
爆発を背に立ち去るところとか、戦隊ヒーローみたいだし。忌々しい“Cancer”を吹っ飛ばすウォルターの姿に爽快感を感じると同時に、ここに来てより悪の道に一歩踏み出したな、って印象を受けた。ちなみにここで流れるDarondoのDid't Iって曲も渋くて超カッコイイっす。
第6話「Crazy Handful of Nothin'」では、さらに多くの金を必要とするウォルターは、そのシマを取り仕切るギャング、トゥコに接触するようにジェシーに持ちかける。しかし凶暴なトゥコは、メスだけ奪いジェシーをボコボコにする。キレたウォルターは今となってはお馴染みのスキンヘッドスタイルになり、単身トゥコのアジトに殴り込むのだが、もちろんただじゃ済まさないホワイト先生。メスに見せかけた雷酸水銀という爆発性のある化合物を床に叩きつけて、アジトを丸ごと爆破!
丸刈りの父親を見たウォルターJrは、「Badass Dad !」って言ってたけど、本気でBadassになった瞬間である。。恐るべき化学の力。この「ペンは剣より強し」的なバトルも「BrBa」の魅力なのである。最高。
長くなったけどシーズン1から、コメディありドラマありグロありのスタイルが確立されており、5年後の最終話まで「BrBa」のそのスタイルは揺らぐことはない。これは当初からクリエイターのヴィンス・ギリガンが描きたい明確なビジョンがあったからなんだな、と再認識できる。
そしてシーズン2では、1を遥かに越える展開でウォルターとともにドラマ自体が怪物と化していく。。というわけでシーズン2についてはまた後日。
ゴールデングローブ賞ノミネートの新作海外ドラマが面白そう
“Downton Abbey,” PBS
“Game of Thrones,” HBO
“The Good Wife,” CBS
“House of Cards,” Netflix
“Jane the Virgin,” The CW
“Orange is the New Black,” Netflix
“Silicon Valley,” HBO
“Transparent,” Amazon Instant Video