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悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかの感想書いてます

ぶっ飛んだファミリードラマ『Weeds〜ママの秘密』が最高に面白いワケ

遂にNetflixに「Weeds〜ママの秘密」が来た。21世紀最高傑作のテレビドラマは「ブレイキング・バッド」だと思ってるが、個人的な好き度で言えば圧倒的にコッチ、「Weeds」だ。
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主人公は、夫を突然亡くした主婦ナンシー・ボトウィン。中流階級が集まる架空のカリフォルニア州の郊外、アグレスティックという街に住む彼女は、これまでの生活を維持しながら、2人の息子を育てるために、商売を始める。それがなんと大麻の売人だった、という物語。なんかどこかで聞いた話かと思うけど、そう、実は「ブレイキング・バッド(以下、BrBa)」と設定は一緒。でもこのドラマが「BrBa」と違うのは、その軽さである。実はこれでもファミリードラマなのだ。

「BrBa」が余命僅かな高校教師が家族に金を残すために必死で麻薬を売り捌いていたのに対し、「Weeds」でナンシーが売人となった理由は、中流階級の生活(プール付きの一軒家に住み、私立の学校に子供を通わせる)を維持するためである。そう、このドラマは中流階級層の批判が核となっている。
そのテーマが最も集約されているのがオープニングで、同じ家が立ち並ぶ郊外で同じ行動をする住人を描いた皮肉たっぷりのものとなっている。ここで流れるテーマ曲も、フォークシンガーのMalvina Reynoldsが1963年に発表した「Little Boxes」という曲で、これまた歌詞が「大学に行って、働いて、結婚して、家族作って、みんな同じ形の家に住むのよ〜」というコピペされたようなハイクラスな家庭の人生を皮肉った、今聴いても衰えない超ヒップな歌になっている。

(ちなみにシーズン2以降はなんと毎回この曲を歌うゲスト歌手が異なる。中にはエルヴィス・コステロからランディ・ニューマンリンキンパークまで!)

そんな階級社会に住むナンシーも、小学校のPTAや、息子の空手教室の先生に大麻を売り、徐々に街のナワバリを広げていくに従って、ギャングやDEA(麻薬取締局)から目を付けられるようになる。しかしナンシーは、そんなのお構いなしで持ち前の明るさと色気で困難を乗り越えていく。「Weeds」の魅力は、そんなナンシーを含めたキャラクターの面白さにある。
まず何より主人公のナンシーを演じるメアリー=ルイーズ・パーカーの美貌とコメディエンヌぶりが抜群に素晴らしい。ギャングとの抗争に巻き込まれながらも、心配事はPTAやら小学校に自販機を置くか否かだったりするギャップも面白い。その他にも、毎回ハッパばっかり吸ってトラブル起こし、ナンシーに迷惑ばかり掛ける(けど憎めない)会計士のダグ(ケヴィン・ニーロン)と義弟のアンディ(ジャスティン・カーク)のコンビや、ナンシーのママ友で善人を装いながら超性悪ビッチなシリア(エリザベス・パーキンズ)など全員がブッ飛んだキャラクターで、ドラマを盛り上げている。

「Weeds」は、各シーズン毎にテーマが異なり、後半メキシコを舞台にダークな展開や(シーズン5)、ロードムービー調になったりするなどして(シーズン6)、シーズン8まで続いたが、やはり「中流階級家庭」に舞台を絞った初期3シーズンこそドラマ史に残る傑作だと思っている。シーズン3の最終話で、生活のために始めたその「選択」が、いつしか最悪の「結果」となってしまったナンシーの下した社会への「落とし前」、そしてエピソードタイトルが「Go」とあるように、それぞれの登場人物が口々に「Go」と呟いて前に進む姿はまさに最終話にふさわしい大傑作エピソードなので、ぜひ観てほしい。

ちなみに、タイトルのweedとは、大麻を意味するスラング。「ブレイキング・バッド」で扱っていた覚醒剤メタンフェタミン)は依存性も、常習者の犯罪率も高かった。それ故にドラマ自体も重くヒリヒリしていた。対して、大麻は今ではアメリカでも多くの州で合法化され、嗜好品となりつつある。加えて、愛用者はジャンキーというより、だらしないヒッピーな印象が強い。だからドラマも同様に、程よく笑えて、程よく考えさせられる、メロウでDopeなブツとなっているのだ。