悪魔の吐きだめ

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ポール・フェイグが放つブラックなガールズコメディ「シンプル・フェイバー 」

アナ・ケンドリックブレイク・ライヴリー主演の「シンプル・フェイバー 」は、突然失踪したママ友をブロガーママが追ううちに驚きの真相が判明するというサスペンスミステリー。として謳われていたが、実際観てみるとこれがコメディだったから更に驚いた。

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それもそのはずで、監督はポール・フェイグ。「ブライズメイズ」でヒットを飛ばし、その後メリッサ・マッカーシーとコンビを組んだ「デンジャラス・バディ」、「SPY」や、全員女性キャストで挑んで話題となった「ゴーストバスターズ」などガールズコメディを得意とする監督だからだ。


フェイグ自身今作ではヒッチコック風のサスペンスを目指したらしく、失踪事件に迫るあたりはピリついた緊張感とフェイグらしくないセックスと血の臭いが充満している。かと思いきや後半のある瞬間からトンデモコメディへと転調。やっぱりポール・フェイグはこうでなくちゃ、となってしまうのだから可笑しい。

暮石の上でマティーニで乾杯するなど、周りにバレたらどうすんだ的なシーンもあるものの、ビジュアル優先として観れば最高にイカしていて、しかもその時点では映画は完全にコメディに成り代わってしまっているのだから演出として上手いなぁと唸ってしまう。


そしてすったんもんだあった末、エンドロールで流れるのがNo Small Childrenの歌う“Laisse Tomber Les Filles”。この曲の英語カバー“Chick Habit”がタランティーノの「デス・プルーフ」のエンドロールでも使われていたことを思い出す。あの作品も強烈な女子の“踵落とし”で終わっていたことを思うとなかなか粋な選曲である。


今回のキャスティングも良くて、アナ・ケンドリックはどことなく鼻に付く優等生キャラのイメージが強くて好きじゃなかったけど、その嫌味な持ち味が遺憾なく発揮されていた。対するブレイク・ライヴリーもスーツに身を纏い髑髏の杖をついて登場するなど全身でbit*hキャラを演じていて超カッコいい。恐らく演じていても楽しかっただろうなと思う。

脇役ではアンドリュー・ラネルズも黒一点でお笑い役に回っていて好印象。「GIRLS」の時もそうだったけど女子のドラマに華を添える存在として良い立ち位置である。リンダ・カーデリーニも「グリーンブック」の良妻役とは真逆のスカしたキャラでナイス。後から気がついたけど彼女実はポール・フェイグとは「フリークス学園」以来のタッグじゃないか。そういう意味でも今回の出演は感慨深い。


これは余談だけど、ジャン=マルク・ヴァレが監督したTVシリーズ「ビッグ・リトル・ライズ」も同じく主婦が主役のサスペンスメロドラマだったが、ヴァレの得意とするフラッシュバックやカットバックの演出を多用して単純なソープモノで終わらず、見応えあるソリッドでスタイリッシュなドラマになっていて素晴らしい出来だった。対して今作「シンプル・フェイバー」も似たテーマながらやはりポール・フェイグらしさが遺憾なく発揮されていて、当たり前だけど監督次第でこんなにもテイストは違うんだなぁと思ったり。フェイグが撮った「ビッグ・リトル・ライズ」、ヴァレが撮った「シンプル・フェイバー 」も面白いだろうなぁと考えてしまった。