悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2017年 映画ベスト10

2017年の個人的映画ベスト10について。

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第10位「ゲット・アウト」

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米人気コメディアンのジョーダン・ピール初監督作は、笑いと恐怖の紙一重の差ギリギリを描いたエンタメホラー映画。古典ホラーをベースにしながら人種問題も取り入れた、2017年のアメリカの今を反映するWTFな一本。

 

第9位「スイート17モンスター」

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「なんで自分ばっかり!」と日々周りのせいにしてきた10代を経験した(そして今もそう思う日々を送る)全ての人たちにとって、今作の主人公の姿はあまりにもイタすぎる。主人公を演じたヘイリー・スタインフェルドのキャラクターも含めて、後世に語り継ぐべき新たな学園映画。

 

 

第8位「散歩する侵略者

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血まみれの女子高生が笑顔で道路を闊歩し、その後ろで車が横転する。黒沢清が描く世紀末は、不気味さと可笑しさが絶妙なバランスで入り交じった世界。そんな異様な作品ながら、スピルバーグ的エンターテイメント性が存分に溢れていた傑作であり怪作。

 

 

第7位「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」

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家族というのは必ずしも良いものではない。「イカとクジラ」から一貫して家族の「苦い」部分を切り取ってきたノア・バームバックは、親や兄弟への「諦め」と「許し」、そしてそれが一番の「優しさ」であることを描く。息子のアダム・サンドラーが父のダスティン・ホフマンに向ける「ありがとう、さようなら」という言葉が忘れられない。

 

 

第6位「ベイビー・ドライバー

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音楽に合わせて車がドリフトし、銃声が鳴り響く。エドガー・ライトは、このポップで陰惨な“ミュージカルカーアクション”で新たな地位を間違いなく確立した。冒頭のハイライトでもあるThe Jon Spencer Blues Explosionの“Bellbottoms”に乗せた銀行強盗シーンが最高。

 

 

第5位「Demolition」(雨の日は会えない、晴れた日は君を想う)

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突然妻を失った主人公は、身の回りの物を破壊していくことで、自分の気持ち、悲しみを理解しようとする。そんな主人公同様に、映画自体も過去や妄想がフラッシュバックとして細かく散りばめら、物語が脱構築して描かれる。この手法を得意とするジャン=マルク・ヴァレが描くべくして描いた奇妙で哀しい人間ドラマ。

 

 

第4位「20センチュリー・ウーマン

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女性に囲まれて育てられたマイク・ミルズの自伝的作品。あくまで男性から見た視点として「結局母親(女)ってよくわんねえや」と見栄を張らずに帰着するところにも好感が持てるし、隣に住む女の子としてエル・ファニングをキャスティングするあたりがかなり分かっている。

 

 

第3位「キングス・オブ・サマー」

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少年時代の「あの夏」の「あの瞬間」だけを切り取った本当のサマームービー。主人公たちの姿、光景を自分の「あの頃」と重ね合わせて何度涙ぐんだか分からない。米TV界で活躍するコメディアンたちも多く出演しており、そのコミカルなやり取りも面白い。

 

 

第2位「釜山行き」

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まだ「観たことない」ゾンビ映画があることに衝撃。全カット、全キャラクター、そのそれぞれの物語がとにかく素晴らしい。冒頭で安易にキャラクターの説明に入ることなく、状況に対して個々がどう反応していくかで各登場人物に深みを持たせ、さらに中盤で席替えをすることで、新たな人間ドラマを生みだす。「電車」という前後にしか進めない状況の中で工夫した演出と、どこの車両に誰が乗ってるかという位置関係の描き方も見事。

 

 

第1位「ハクソー・リッジ

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狂った人間が、戦争という狂った場所に放り込まれたら。その異常な世界を描いた「ハクソー・リッジ」が今年一番の映画体験だった。「武器を持たずに戦場に行く」という恐ろしい信念を持つ主人公デズモンドと、それに翻弄される前半の人間ドラマも申し分なく面白いが、何より後半の異様なテンションで描かれる沖縄・前田高地(ハクソー・リッジ)を舞台とした戦場シーンが凄い。カメラが崖の上をクレーンアップすると、地面が火を吹き、人体が肉片となって吹き飛ぶ様はまさに本当の「地獄」。その最中に「信念」だけを武器に身一つだけで乗り込むデズモンドの行動にただただ唖然。信念と狂気は紙一重だということ描いたこの作品は、メル・ギブソン以外には作れなかったかもしれない。

 

ベスト10からは漏れたものの、そのほか今年好きだった作品は以下。

ノクターナル・アニマルズ

マンチェスター・バイ・ザ・シー

「T2 トレインスポッティング

「エイミー、エイミー、エイミー!」

ドクター・ストレンジ

「沈黙」

「Okja/オクジャ」

 

また、今年のMVPはエル・ファニング。4位に選んだ「20センチュリー・ウーマン」のほか、今年は「ネオン・デーモン」に始まり、「パーティで女の子に話しかけるには」まですべて違う役柄ながらどれもピッタリのはまり役だった。今後にさらに期待したい。