悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

2016年 海外ドラマベスト10

昨年以上に作品数が豊富だった2016年。去年は15本程度だったが、今年はその倍以上の作品を観ることができた。その中から今年のベスト10本を選出した。

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10位「ワン・ミシシッピ 」(シーズン1)

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Amazonオリジナルシリーズ。スタンダップコメディアンのティグ・ノタロの実体験を基にした半自伝的コメディドラマ。母の死をきっかけに故郷に帰省したティグが自身と向き合う姿をシニカルな笑いとともに描く。Netflixで配信中の彼女のドキュメンタリーとあわせて観るとより彼女の背景を理解できる。製作には「JUNO」の脚本家ディアブロ・コディとコメディアン仲間のルイスCKが名を連ねている。

ベストエピソード : ep1 "Pilot"

 

9位「Veep」(シーズン1)

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賞レースの常連ながらなかなか日本で観られなかったHBOの政治コメディがようやくHuluで配信。ジュリア・ルイス=ドレイファス演じる女性副大統領とその取り巻きを描くノリはまるで「30 ROCK」。ドキュメンタリーテイストな手持ちカメラと毎回のドタバタが楽しい。

ベストエピソード : ep6 "Baseball"

 

8位「殺人を無罪にする方法」(シーズン1)

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グレイズ・アナトミー」のショーランナー、ションダ・ライムズが放つミステリーサスペンス。ヴィオラ・デイヴィス演じる鬼弁護士と部下の学生たちが毎話依頼人からの弁護に奔走するとともに、並行してその彼らが関与した殺人事件がフラッシュフォワード形式で描かれる。その破茶滅茶な展開と過剰なお色気シーンで否応無しに釘付けにする、これぞまさにTVポルノ。そして今作がケーブル局ではなく、ネットワークで放送されたというところに、ネットワーク局の意地を見た気がする。後半のヴィオラ・デイヴィスマーシャ・ゲイ・ハーデンの演技合戦も見もの。

ベストエピソード : ep15 "It's All My Fault"

 

7位「LOVE」(シーズン1)

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ジャド・アパトー製作のNetflixオリジナルドラマ。正反対の性格の2人が惹かれては離れてを繰り返す姿にモヤモヤしながら最終話は涙。本作で主演を務めるポール・ラストとレスリー・アーフィンの実体験を基にしているだけあって、リアルな2人の描写が身につまされて痛い。

ベストエピソード : ep10 "The End of the Beginning"

 

6位「The Inbetweeners」(シーズン1-3)

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イギリスE4チャンネルで放送されたコメディドラマ。バカな高校生4人組が女の子とセックスするために奮闘するいわば「スーパーバッド」ライクな青春モノなのだが、イギリスだけあってその下品さと笑いがかなりブラック。そして何より学生時代の楽しさが目一杯詰まったドラマとして時折胸が熱くなった。UKロックを中心としたサントラもナイス。

ベストエピソード : s1 ep10 "Xmas Party"

 

5位「シリコンバレー」(シーズン3)

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マイク・ジャッジ製作のIT業界を舞台としたコメディドラマ。毎話、毎シーズン絶体絶命の危機を迎える彼ら「パイドパイパー」社が、ようやく軌道に乗り出したシーズン3。最終回では、相変わらず向かう所敵だらけな彼らに待ち受ける最高のドンデン返しが待っておりこれほどまでに完璧なラストがあったのかと感心。コメディとしてももちろん抜群に笑えるのだが、予想外の展開をみせる脚本にはいつも唸らされる。

ベストエピソード : ep10 "The Uptick"

 

4位「ストレンジャーシングス」(シーズン1)

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今年一番話題になったと言っても過言ではないNetflixオリジナルドラマ。溢れんばかりの80年代オマージュと、作品全体に漂うスティーヴン・キングの香り。昔読んでいた「IT」や「キャリー」、「ニードフル・シングス」を、まざまざと思い出して涙。クリエイターは新鋭のダファー兄弟が務めているが、監督として参加したショーン・レヴィが務めた第3話は、単なるミステリードラマとしてでは無く、ファンタジーとしての魅力も最大限に引き出した傑作エピソード。

ベストエピソード : ep3 "Chapter Three: Holly, Jolly"

 

3位「プリーズ・ライク・ミー」(シーズン1-2)

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オーストラリアのコメディドラマ。自身がゲイだと自覚し始めた主人公のジョシュと、精神を病んだ彼の母親の生活が描かれるのだが、大人になりきれない2人の姿が可笑しくて、そしてその健気な姿に泣けてくる。そして、ジョシュと恋人のアーノルドの付かず離れずな関係にやきもき。主人公のジョッシュを演じるとともに、本作のクリエイターを務めるのは、オーストラリアのスタンダップコメディアン、ジョッシュ・トーマス。今作は彼の実体験を基にしたというのが驚き。LGBTドラマというだけで敬遠するのは勿体ない傑作。

ベストエピソード : s2 ep7 "Scroggin"

 

2位「ファーゴ」(シーズン2)

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シーズン1ではコーエン兄弟作品へのオマージュを取り入れ高評価を得たことにより、シーズン2ではその箍が外れ、オマージュを残しながらも今回はオリジナリティを前面に押し出し、その結果シーズン1を越えてしまった。誤解が生み出す暴力と死の連鎖に呆れながらも笑わせるクリエイター、ノア・ホーリーの手腕たるや本当に見事。キルスティン・ダンストも狂気の演技で女優の意地を見せつけた。

ベストエピソード : ep8 "Loplop"

 

1位「トランスペアレント」(シーズン2-3)

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トランスジェンダー父親とその家族を描くAmazonオリジナルドラマ。シーズン2ではナチスから迫害されていた彼らの祖先の姿とともにアイデンティティを巡る物語を壮大に描き、シーズン3では身近な人の死や別れをきっかけに自身と向き合う事になる家族の姿が描かれた。今回特に素晴らしかったのがシーズン2の第9話、女性からも男性からも受け入れられないモーラが、思わず女性のコミュニティを破壊してしまうというシーンがある。それがかつて彼らを迫害をしていたナチスの姿と重なることで、トランスジェンダーLGBT)が決して単なる被害者では無いことを描く。そんな傷だらけの彼らを優しく包み込むのは母親のシェリー。これまで家族から疎まれていた彼女が、シーズン3の最終話で、抱える問題全てを浄化するかの如く「きっとうまくいく」と高らかに歌い上げる姿にテレビの前でスタンディングオベーション。3年目になっても依然この時代を代表するドラマであり続けている。

ベストエピソード :

s2 ep9 "Man on the Land"

s3 ep10 "Exciting and New"

 

去年Netflixに押されてしまったHuluが、今年HBOと独占契約して一気に巻き返し。その一方でAmazonも「Mr.ROBOT」や「ファーゴ」、オリジナルドラマを次々に配信するなどし、結果溢れるほどの作品数にこちらは嬉し泣き状態。今後も3社で刺激し合うことより多くの作品が観られることを期待したい。