悪魔の吐きだめ

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ティナ・フェイが描く逆境女子ドラマ『アンブレイカブル・キミー・シュミット』

前回もNetflixのドラマ、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』や「ブレイキング・バッド」のスピンオフ『ベター・コール・ソウル』について書きましたが、今回はコメディドラマ『アンブレイカブル・キミー・シュミット』について。

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内容は、ニューヨークで生活を始めることになった超ハイテンションなアラサー女子、キミー・シュミットの生活を描くコメディ。一見「アグリー・ベティ」と似たような話を想像しそうだが、このドラマの違う点は、なんと主人公がカルト教団に15年間も地下に監禁されていたという設定。しかし、そんなホラーな設定ながらシリアスな場面は一切無しで、ハイスピードなドタバタギャグが繰り広げられる。

これまで誘拐犯の教祖から「人類は滅亡した」と教えられていた主人公のキミーの15年のブランクによる世間とのギャップネタが面白い。死語をバンバン連発し、iPhoneを見て「マッキントッシュがこんなに小さくなるのね!」と驚いたりする。台詞に出てくる映画ネタもいちいち古くて笑える。

そんなドラマだが、実はクリエイターのティナ・フェイの実体験が元になってるんじゃないかと思う。彼女は幼い頃に家に侵入した変質者に、顔を切りつけられた過去を持つ。本人曰く、その事件をトラウマに思ったことは無いそうだが、やはりその過去が少なからず影響しているのだと思う。

彼女は老舗コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」でこれまで男性が務めてきたヘッドライターに初の女性として抜擢され活躍。他にも代理出産をテーマにした映画「ベイビー・ママ」などに主演し、秀才コメディエンヌぶりを発揮した。卒業後も、自身が主演兼クリエイターとしてドラマ「30 ROCK」で、上司や出演者に振り回されながらも奮闘する女性プロデューサー、リズ・レモン役を好演した。やはり「逆境に負けずに頑張る女性」というテーマが彼女の作品の核にあると思う。

先に述べたように、ドラマ自体はドタバタコメディ色が強く、悲惨さは微塵も感じさせないのだが、キミーの台詞の端々から監禁されてる間に無理矢理性交渉させられていたことや、不当な扱いを受けていたことが語られる。もちろん実際の事件であれば深刻な問題となると思うが、キミーはその経験をもバネにして「マトモ」な生活を手に入れようと奮闘する。タイトル通り「アンブレイカブル」なキミーの姿に、視聴者は笑いながらも応援したくなる。これぞまさに、ティナ・フェイだからこそ描ける「逆境女子ドラマ」なのだと思う。