悪魔の吐きだめ

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『フランシス・ハ』とイタい女子映画

ノア・バームバックの『フランシス・ハ』を観ました。

全編モノクロ映像で、「トリュフォーのオマージュが」などの感想を見たせいで、なんとなく敬遠していたけど、実際は『ブライズメイズ』や『ヤング≒アダルト』に並ぶ「イタい女子映画」の傑作でした。

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ニューヨークでプロのダンサーを目指しながら親友と同居して暮らしているフランシス(グレタ・カーウィグ)の日常を描くコメディドラマなのだが、彼女の身に起こる不幸がかなり痛々しい。恋人よりも友人を優先して別れた途端に同居人の親友が家を出て行く。プロのダンサーを目指しているもののなかなか芽が出ず、友人たちに自慢していた公演から役を外される。

しかし、彼女の身に起こることは、全て彼女自身が招いたもの。男性とうまくいきそうなところで自分で歯止めをかけてしまったり、プライドも高くつい周りに見栄を張ってしまう。そんな彼女を観ながらモヤモヤしながらも何処かで僕も自分と重ね合わせてしまったりした。親友はいつしか婚約し、いつまでも子供のように振る舞うフランシスを疎ましく思う。かつて彼女に気の合ったルームメイトの男にも彼女ができてしまうし、気がついた時には、彼女の周りには何も残っていない。

以前からラブコメの主役は、ダメな女子の主人公が多かったが、近年のこれらの映画にはイケメンと結ばれてハッピーエンドな結末が待っているわけではなく、徹底的に現実を描いた地獄のような女子映画である。

ジャド・アパトー製作の『ブライズメイズ』では、主人公が親友の婚約を機に自らの人生を見つめなおす。仕事や恋人、友人まで全てを失い、はじめて失敗を周りのせいにしていたことに気がつく。

『JUNO』のジェイソン・ライトマンディアブロ・コディのコンビ製作の『ヤング≒アダルト』では、シャーリーズ・セロン演じる主人公メイビスが、元恋人の出産を知りその恋人とヨリを戻そうと故郷へ帰る物語。主人公は、故郷の田舎町を馬鹿にし、都会で働きいつまでも美しさを保つ自分を誇りに思っていた。しかし、故郷で高校時代の同級生や元恋人、両親と会うことで、自分の生き方を考えさせられてしまう。

 

面白いのは、これらの3作において彼女たちの導き出す答えがそれぞれ違うこと。特に、『ヤング≒アダルト』のメイビスが出す答えは凶悪かつ最高なのだが、個人的には、『フランシス・ハ』の回答こそ一番リアルでショッキングだった。ラストで分かる、本作のタイトル『フランシス・ハ』の意味がその答えとなっている。