悪魔の吐きだめ

映画とかドラマとかのことを書いてます。

改めて『ブレイキング・バッド』について語りたい~シーズン1~

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ようやく重い腰を上げて「ブレイキング・バッド」について書く事にした。なんで重い腰になるかと言うと、それは言うまでもなく「ブレイキング・バッド」(以下BrBa)こそ海外ドラマ史上最も優れたドラマであり、個人的にも大ファンだからである。

散々Twitter含めて、会う人会う人に「BrBa」をオススメしてた。ようやく昨年にソニーからファイナルシーズンまでDVD化されたけど、数年前にシーズン2までが発売された頃から大ファンで、当時から声を大にして猛烈プッシュしてたものの、それ以降のシーズンは全くソフト化されなくて。。あの時はほんと苦しい思いをしてたなぁ。結局最初に「BrBa」を発売していたDaylighって会社はどうなったんだろうか。。

まあ、そんな話はさておき「BrBa」は本当にすごいドラマだと言うことを長々と書きたいと思います。先に言っておくけど、ネタバレ前提で語っていくので、未見の方はご注意を。

このドラマのシーズン1は、いわば物語の序章である。全ての物語のキッカケ(元凶)が描かれる。

主人公のウォルター・ホワイトは、高校の化学教師。妻と息子を支えるために安月給ながらも懸命に働いていたところ、突然倒れ、運ばれた先の病院で末期ガンを宣告される。そんな彼は家族にお金を残すために元教え子のジェシー・ピンクマンと手を組み、ドラッグ精製を始める。ってのが物語のはじまり。

少しお金を稼ぐために軽い気持ちで始めたドラッグビジネスは、だんだんと思わぬ結果となっていき血を血で洗う闇の世界に徐々にドップリ浸かっていくのだが、まだシーズン1ではその世界の恐ろしさを知ったウォルターの戸惑いが描かれている。

第1話には「ブレイキング・バッド」の面白さが全て詰まっている。師弟関係となるジェシーとの世代ギャップギャグ。妻スカイラーに対して秘密を抱える苦悩。そして化学の力を使って悪人に立ち向かう痛快さである。

脳性麻痺を抱える息子をいじめる不良を蹴り倒し、メスの精製に見せかけて毒ガスを発生させギャングを気絶させ、初の取引で大量に金を稼げたウォルターは、男を取り戻し帰宅後にスカイラーと激しくセックスする。初回からこんなにもブッ飛んでるドラマがあっただろか。しかもこれがコメディとして作られているのが驚きである。加えて、アルバカーキの乾いた荒野と澄み渡る青空の風景を捉えた画作りが、この暴力的な物語とマッチし、なんだかコーエン兄弟の「ファーゴ」の荒野版を見ているようだ。(実際、かなりこの映画には影響を受けているらしく、今シーズン最終話のタイトル「A No-Rough-Stuff-Type Deal」は、「ファーゴ」の台詞から取られている)

 

今シーズンでパイロットの他に特筆すべきエピソードは、ウォルターが悪に振り切れた第4話「Cancer Man」と第6話「Crazy Handful of Nothin'」である。

第4話「Cancer Man」では、ウォルターはガンを宣告された事を家族に告白する。このシーンは涙無しでは見られないほど役者陣の演技が素晴らしいのだが、このエピでは、もう一人のCancer Manが描かれる。タイトルが意味するのは、ガンを患った男=ウォルターと、社会的にガンのような奴=ケンである。

銀行の列を割り込みし、ハンズフリーで大声で話すケンという男を見かけたウォルターは、不快に思いつつも何も言えなかったが、たまたま入ったガソリンスタンドで彼の姿を見かける。彼が車から離れた隙に彼の愛車のボンネットに濡れたモップを突っ込み、バッテリーをショートさせて車ごと爆発させる。

もうこのシーンがマジで最っ高にカッコイイんだよね。

爆発を背に立ち去るところとか、戦隊ヒーローみたいだし。忌々しい“Cancer”を吹っ飛ばすウォルターの姿に爽快感を感じると同時に、ここに来てより悪の道に一歩踏み出したな、って印象を受けた。ちなみにここで流れるDarondoのDid't Iって曲も渋くて超カッコイイっす。

 

第6話「Crazy Handful of Nothin'」では、さらに多くの金を必要とするウォルターは、そのシマを取り仕切るギャング、トゥコに接触するようにジェシーに持ちかける。しかし凶暴なトゥコは、メスだけ奪いジェシーをボコボコにする。キレたウォルターは今となってはお馴染みのスキンヘッドスタイルになり、単身トゥコのアジトに殴り込むのだが、もちろんただじゃ済まさないホワイト先生。メスに見せかけた雷酸水銀という爆発性のある化合物を床に叩きつけて、アジトを丸ごと爆破!

 丸刈りの父親を見たウォルターJrは、「Badass Dad !」って言ってたけど、本気でBadassになった瞬間である。。恐るべき化学の力。この「ペンは剣より強し」的なバトルも「BrBa」の魅力なのである。最高。

 

長くなったけどシーズン1から、コメディありドラマありグロありのスタイルが確立されており、5年後の最終話まで「BrBa」のそのスタイルは揺らぐことはない。これは当初からクリエイターのヴィンス・ギリガンが描きたい明確なビジョンがあったからなんだな、と再認識できる。

そしてシーズン2では、1を遥かに越える展開でウォルターとともにドラマ自体が怪物と化していく。。というわけでシーズン2についてはまた後日。